速報!第2回TV討論「トランプ善戦」の不思議

一気に支持を失う中で壊滅的敗退は免れた

「聴衆は、その(文章の)空白を自分の思いで埋めていく。失業に対する恐怖、アメリカがもはや超大国ではないという不安、テロへの心配…。トランプはそうした不安や心配に付け入り、その気持ちを怒りに変えていくように仕向けている。そしてその怒りによって、いかにも彼らが力を取り戻せるかのような幻想を聴衆に与えている。まさに彼は『感情レベル』で聴衆と繋がっている」(Kristin Du Mez氏のコメント、Voxより)。

人々の「感情」を支配する力。トランプのこの力はすさまじいものがある。ロジック、「理」で勝負するヒラリーはこの部分ではまったくかなわない。だから討論において、論理力という観点で、いかにヒラリーに軍配が上がったとしても、トランプの熱狂的支持者は耳を貸すことはない。いかに、そのロジックが破たんしていようと、あまり関係ないのだ。選挙において有権者の行動を最も動機づける要因とは何か。それは、候補者に対する「直感的な好き嫌い」なのだそうだ。

トランプやヒラリーを支持するかしないかという決断の80%は、彼らが「温かみがあるか」「有能であるか」といった本能的なフィーリングによるもの――。今年9月にアメリカのコンサルティング会社が行った調査によれば、どちらの支持者も自分が支援する候補者を「温かみがあり、有能である」と高く評価する一方、他の候補者を「冷たく、無能」と評価した。そうした評価が投票行動に直接的に結びついていると結論づけられている。つまり、投票行動は、政策による評価であるとか、実績による評価というよりも、人が腹の底で感じる本能的な好き嫌いに委ねられる部分が大きい、ということらしい。

ヒラリーは冷たくて権威主義的にみえる

そもそも、政治的信条や主義を変えるのは至難な業だ。様々な研究者がその方法を考えてきたが、これまでに有効な手段は見つかっていない。「なぜなら、政治的な嗜好は注意深い熟考や慎重に検討した結果ではなく、もっと感情的な部分に紐づくものだからだ」(ニューヨークマガジン誌)。感情的アピール力の高いトランプが、有権者の本能的フィーリングを刺激しているという側面はあるだろう。また、「ヒラリーは冷たくて権威主義的で信頼ができない」。そうしたネガティブ感覚が、トランプ支持に向かわせているという要因もある。

トランプには熱狂的な支持層がいる(写真:REUTERS/Eduardo Munoz)

もちろん、明確な2大政党政治の中で、根っからの共和党支持者であれば、そのパラダイムをひっくり返すことは、地球をひっくり返すのと同じぐらい不可能である、という考え方の人も少なくない。

一方、トランプ支持者が、低所得、低学歴の白人層に多いことをとらえ、そうした有権者たちが「無知」なのではなく、「無知であることを自覚していない」ことが問題だと指摘する声もある。未熟な人、あるいは能力の低い人が、自分の考えや行動などを実際よりも高く評価してしまう認知バイアス「ダニング=クルーガー効果」を提唱したコーネル大学の元教授デビッド・ダニング自身が政治メディアPoliticoの中で、トランプ支持者はまさにこうしたバイアスの該当者ではないかと述べている。

自分の愚かさを客観視できず、メタ認知(自分の思考や行動そのものを客観的に把握し認識すること)ができないがために、自分の考え方を高く評価し、正当化してしまう。ダニングは、トランプそのものにもこの傾向がある、と言い切っている。自分の考えが絶対的に正しいと信じ込んでしまっている人の気持ちを変えることは非常に困難なのだ。

アブラハム・リンカーンの格言に次のようなものがある。“You can fool all the people some of the time, and some of the people all the time, but you cannot fool all the people all the time.”(すべての人たちを一時だましたり、一部の人たちを常にだましたりすることはできるが、すべての人たちを常にだますことはできない)。

一部の人たちはずっとこれからも狂信的にトランプを支持していくだろう。しかし、すべての人がずっと騙され続けることはあり得ない。化けの皮は、そろそろ剥がれつつある。

(文中敬称略)
 

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