近づくマイナス金利、ドラギ総裁も手詰まり? 景気・経済観測(欧州)
では、ECBが今後追加利下げを実施し、下限の預金金利をマイナスに引き下げた場合、貸出増加などの景気刺激につながる可能性はあるのだろうか。ECBが昨年7月に預金ファシリティ金利をゼロに引き下げた際(超過準備の付利を撤廃)、預金ファシリティの残高が急減した一方で、当座預金の残高が急増し、両者を合わせた金額はほとんど変わらなかった(図表2)。
つまり、付利撤廃で余剰資金が預金ファシリティから当座預金にそっくり移っただけで、実体経済に余剰資金が染み出した様子はない。この間の銀行貸出の推移をみても、貸出の減少ペースはむしろ加速している。資金需要そのものが低迷するなか、罰則金利を適用した場合も、同様に資金の置き場が変わったり、超過準備そのものを圧縮するインセンティブが働くに過ぎないだろう。
マイナス金利には副作用がある
そればかりか、銀行の超過準備に罰則金利を適用すれば、銀行の利益を圧迫する。この場合、銀行は貸出利ザヤの上乗せなどで利益の穴埋めをしようとし、却って貸出が減少する恐れがある。
加えて、ECBが将来的に資産買い入れなどの量的緩和策を導入しようと考えた場合(今のところ否定しており、技術的にも困難だが)、こうした政策措置の効果を阻害することにもなりかねない。なぜなら、民間銀行にとってみれば、投資利回りが期待できる金融資産を中銀に売却し、代わりに負の金利収益(罰則金利)を科される中銀預金を受け取るインセンティブは見当たらない。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら