近づくマイナス金利、ドラギ総裁も手詰まり? 景気・経済観測(欧州)

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市場の期待誘導を狙った言葉とは裏腹に、追加緩和に及び腰と受け止められれば、市場はECBの“手持ちカード”が少なくなってきたことを察知しよう。他方、実際に預金金利をマイナスに引き下げた場合にも、市場参加者の多くは目立った政策効果は期待できないと考えていることから、追加緩和への督促が始まる恐れがある。

景気浮揚面でのドラギ・マジック再燃はなるか

ECBは現在、利下げの効果を阻害している“市場の分断化”の改善を目指し、資産担保証券(ABS)を活用した中小企業への融資促進策の検討を開始している。ただ、新たな中小企業支援策が景気浮揚の即効薬となるかは疑わしい。欧州のABS市場は長らく休眠状態にあり、新制度の導入には実務・制度の両面で様々な障害がある。総裁はさまざまな政策選択肢を検討しているとするが、同時に検討はごく初期的な段階にあることを認めている。

ドラギ総裁は2011年11月の就任以来、期間3年の長期リファイナンスオペ(LTRO)で欧州の銀行の資金繰り危機を救い、金額の上限を設けない新たな国債購入策(OMT)でイタリア・スペインへの危機波及懸念、さらにはユーロの分裂・崩壊リスクを封じ込めることに成功してきた。

ドラギ総裁の果敢な行動と“言葉の力”で債務危機に対する過度な不安心理は後退した。しかし、今、市場が求めている景気浮揚の面では目を見張る成果を挙げることができずにいる。追加の利下げ余地が乏しくなるなか、ドラギ総裁の次の一手に注目が集まる。

田中 理 第一生命経済研究所 首席エコノミスト

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たなか おさむ / Osamu Tanaka

慶応義塾大学卒。青山学院大学修士(経済学)、米バージニア大学修士(経済学・統計学)。日本総合研究所、日本経済研究センター、モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター証券(現モルガン・スタンレーMUFG証券)にて日、米、欧の経済分析を担当。2009年11月から第一生命経済研究所にて主に欧州経済を担当。

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