神社が「政治的存在感」を増している根本理由 日本会議の源流を作り改憲運動で中心的役割

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国全体を眺め、幾多の社会問題も、モラルや精神性がなくなっているところからきているものが少なくないという認識だ。伝統的な神社にはそれなりの基盤があり、安定性もある。精神性や宗教性の取り戻しに気づいてもらえれば、社会全体の健全な発展にも貢献でき、国民の神道の役割を担える。

──国民の神道?

小林正弥(こばやし まさや)/千葉大学地球環境福祉研究センター長、慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科特別招聘教授を兼任。東京大学法学部卒業後、東大助手、英ケンブリッジ大学客員研究員などを経る。専門は政治哲学、公共哲学、比較哲学。米ハーバード大学のマイケル・サンデル教授と交流が深い(撮影:梅谷秀司)

戦前は国家神道とされ、戦後は国家と分離するとなった。

戦後の神社の政治運動に影響を与えた人に葦津珍彦(うずひこ)氏がいる。神道の公共性を回復するために国家との結び付きを一定程度回復させようとした。神道政治連盟の結成などを通じ、政治運動を思想的に支えた。

神社本庁を設立する際には中心的役割を担った。神社にはそれぞれ由緒がある。祭っている神々は一つではなく、考え方も違うところがある。統一はとてもできないので、多様性を認める連合体とし、その中心に伊勢神宮を据えて、その結集体として神社本庁を作った。多様性を尊重するあり方はとても貴重だった。

──多様性を尊重したのですね。

GHQ(連合国軍総司令部)の下で、国家と切り離されて神社本庁は民間の宗教法人になった。民間が公共的な役割を担い、しかも多様性を持つ──今の時代から見たら「民の公共」を先取りした面がある。葦津氏らは国家と結び付きたいと考え、懸命に公共性を追求したのだが、それは民の公共における時代のフロントランナーとも見ることができる。

マナーを守るかぎり誰が入っても、祈ってもいい

たとえば、われわれは神社にお参りに行くとき自由に境内に入るのは当たり前と思っている。マナーを守っているかぎり誰が入っても、祈ってもいい。その面で公共の祈りの場として、さらには鎮守の森として、支えてきた神社本庁の貢献は大きい。

──日本人の「よい生き方」とも重なります。

日本の文化を考えると、宗教として神道が古来からあり、生成・発展しながら、今もって生き方や暮らし方に大きな影響を与えている。端的な例が清浄さであり、きれい好きな民族といわれたりする。

──その神社が政治とのかかわりで論議されています。

国家とのつながりをより回復しようという動きが強まり、神道政治連盟ばかりでなく、一部の人が日本会議の源流を作り、今の改憲運動につながっている。国会の場でも憲法改正が具体的にプロセス入り可能となり、ことさら神社界が果たしている役割に注目が集まった。

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