中野 でも、ポジティブに考えれば、デフレスパイラルの根本要因だった円高を除去できたわけですから、環境は改善しつつあるわけです。もちろん、円安がどんどん加速すると弊害も生じてくるので、政策サイドもきちっとメッセージを出していかなければなりません。つまり、環境は整えたので、ここから先は皆さんが、景気の自律的な回復を実現するために必要なことを考え、実行に移して下さい、ということです。
藤野 気になるのは債券市場の動きですね。長期金利は黒田バズーカの発表後、一時的には0.315%まで低下しましたが、そこから今度は0.6%台まで一気に上昇しています。一時的に取引が中断されるサーキットブレーカーも発動されるなど、不安定な状況が続いていますよね。
国債市場は、事実上壊れている
渋澤 国民の99%は気づいていないと思うけど、日本の国債市場は事実上、壊れているといってもよい。これから物価は2%の上昇を目指すというときに、債券市場で長期金利が0.5%台で推移しているというのは、どう考えても理屈に合わない。
中野 でも、日銀がどんどん買うと言っているわけですから、売る側も売れない。
渋澤 問題は4月以降の新年度の動きだよ。だってこれまで国債をがんがん買っていた金融機関は、今回の3月末の時価会計の評価では国債のキャピタルゲインをかなり計上したことになる。となると、これから先、異常なまでに下がった金利からは収益を期待できない。人為的に長期金利の上昇を抑えるオペレーションを行っているわけだから、その抑えが効かなくなったとき、長期金利は一気に跳ね上がるリスクが潜んでいると思うよ。
藤野 根拠が特にあるわけではないけど、10月が怖いな。
中野 暴落しやすい月ですよね。
藤野 そう。1929年の大恐慌(10月)しかり。他にも、1987年のブラックマンデー(同)、2008年のリーマンショック(リーマン・ブラザーズの破たんは9月、一段と暴落したのが10月)など、いずれも10月に起こっています。アノマリーかもしれないけれども、参議院選挙など政治的なイベントの終了、金利動向などを考えていくと、その時期に何かあってもおかしくない。
株価の上昇スピードも速いので、どこかで必ず調整は行われるでしょう。これから投資する人は、こうしたリスクシナリオを織り込んで、マーケットと対峙する必要があります。
中野 とにかく、黒田バズーカの効力があるうちに、経済を自律的な成長軌道に乗せていくことが肝心ですね。
藤野 ROEを上昇させ、給料も上げていく。地道だけれども、こうした努力が大切です。政府は黒田バズーカを打ち出すことでリスクを取り、環境整備をしたわけですから、それを民間がしっかり引き継いで、経済の活性化に努めていく必要があります。
渋澤 抵抗勢力はまだいると思うけど、労働市場の流動性を高めたり、女性活用も積極的に行ったり、とにかく今、安倍政権が行おうとしている政策をしっかり遂行していくことを望みたいね。
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