渋澤 つまり年間で90兆円にもなります。90兆円といえば、日本の一般会計予算ですよ。現状では、税収入がその半分程度しかないから、政府の新しい借入の2倍程度を、日銀が買い取ることになります。
加えて、借換債は年間112兆円の発行が予定されていますので、その7~8割を日銀が買うわけです。そして長期国債に関して言えば、毎月の発行額である2.4兆円に対して、何と5年超10年以下、つまり、すでに発行されている10年債の3.4兆円も買い取るという。国債市場の買い手がオンリー日銀っていうのは……どう考えてもクレイジーでしょ。借金が政府から政府機関に移っているだけで、そこに関していえば何の価値も生んでいない。
中野 確かにナローパスだとは思いますが、でも行動しなければ日本経済はそのまま衰弱死してしまいますよ。
異次元緩和は、「何もしていない人」への一撃
渋澤 うん、それもわかるんだけど、異次元の金融緩和措置を行っていることによる弊害にも目を向けておく必要があるよね。特に為替。今は1ドル=100円前後だけど、何しろ異次元のことをやっているわけだから、150円、200円になることは、「想定外」とはいえない。
そうなったら、企業にとってはコストアップ要因になるでしょ。従業員の賃金も上げにくくなる。個人の生活レベルは着実に低下します。そこから脱却するためには、中野さんがおっしゃったように、私たち一人ひとりが何かアクションを起こさなければならない。つまり黒田バズーカというのは、何もしていない人々に対する一撃だということを、理解しておく必要があるよね。
藤野 特に日本の高齢者層に向けて放ったバズーカ砲という印象を受けますね。これによってキャッシュの価値が殺された。つまりキャッシュを抱え込んでいる人たちからすれば、持っている資産の価値が潰されたわけです。
その意味を理解していない人たちは、これからもどんどん資産価値が目減りしていくことになるでしょう。ただ、黒田バズーカが発表されてから、春の芽吹きのようなものが感じられるようになってきたのも事実です。たとえば若い起業家や、昔起業して大きく儲けた人たちが、リスクを取って何かやろうと動き出しています。
それと内需に動きが出てきていること。これも今回の大きな特徴だと思います。通常、円安が進めば輸出ハイテク企業の業績回復期待から株価も上がるのですが、今回はむしろ内需関連の株価が堅調に推移しています。これは、徐々に個人消費が回復してきていることを意味します。
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