『海賊とよばれた男』に学ぶ、男の生き様 作家・百田尚樹氏に聞く

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──手前みそですが、本誌も終戦3日目の発売号に「前途は実に洋々たり」との社論を掲げ、出光佐三とオーバーラップして見えます。

そう、出光だけではない。確かに出光は昭和20年代には奇跡のようなすさまじい働きをしたが、たかが従業員が1000人や2000人の企業。それだけが頑張っても日本が復興するはずはない。当時、世のためと考える人たちがたくさんいた。だから奇跡の復興につながる。その後の高度経済成長も、数知れぬ「無名の出光佐三」がいたからできた。この物語はそういう無名の人たちを象徴したものだ。

──今はまだ頑張りが足りない?

彼は生涯闘い続けた男。国と闘い、官僚や同業者と闘った。だから会社に銀行や官僚の天下りも入れなかった。官僚からしたら煙たい男だっただろう。日本の石油会社のほとんどがいわゆるセブンシスターズにのみ込まれていく。ところが護送船団から外れて一社だけ違うことをやる。

出光を絶対視するわけではないし、当時の時代背景もあったとは思う。あの生き方が現代でも通用するかといったらわからない。ただ、人に対する信頼という彼の信条はいつの時代にも通用する。

──受賞した本屋大賞は、女性の投票者が多いといわれます。

がちがちな硬派で、女性がほとんど登場しないような……。しかも男も出てくるのはおじさんばかり。そんな本が受賞するのは、日本人にこういう古い生き方に対するあこがれがあるからではないか。

本屋大賞授賞式で何人かの女性書店員の方と話をしたが、「とにかくこの本の中に出てくる男性たちは格好いい」と。今の若い女性たちにとっても、サムライのような男はあこがれなのだろう。

週刊東洋経済2013年5月11日

『海賊とよばれた男〈上・下〉』
講談社 各1680円 上380ページ、下362ページ

高橋 由里 東洋経済 記者

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たかはし ゆり / Yuri Takahashi

早稲田大学政治経済学部卒業後、東洋経済新報社に入社。自動車、航空、医薬品業界などを担当しながら、主に『週刊東洋経済』編集部でさまざまなテーマの特集を作ってきた。2014年~2016年まで『週刊東洋経済』編集長。現在は出版局で書籍の編集を行っている。

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塚田 紀史 東洋経済 記者

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つかだ のりふみ / Norifumi Tsukada

電気機器、金属製品などの業界を担当

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