人気No1は国有企業。保守化する中国の就活 「体制内の労働市場」と「体制外の労働市場」

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なぜ「体制内の労働市場」の人気が高いかというと、そこに入ると、安定した収入とさまざまな福利厚生を得るだけではなく、仕事もそれなりに面白いことができるからです。その厚遇ぶりは驚くほどです。

たとえば家1戸を普通にポンともらえたりします。弊社の金田と郡谷が以前、住んでいた上海の賃貸マンションは、上海電力の社員が所有する物件で、それは会社から支給されたものでした。その社員は家賃収入だけで月に数千元入ってくるので、それだけでも生活安泰です。ちなみに、上海一等地における土地の価格は1平方メートル当たり軽く10万元(150万円、1元=15円換算)を超えるので、標準的な広さであればいわゆる億ションとなります。

私がマッキンゼーで担当したクライアントで、インフラ系の国有企業がありました。国有企業は利益をあまりにもたくさん生んではいけない、適正な利益にしないといけないという建前がありますが、それ以上に儲かってしまっていました。

そこで会社はその利益をどうしたか。グッチのバックに現金をいっぱい詰め込んで、年次総会で社員に配ったそうです。もちろんこれは極端な例かもしれませんが、国有企業にはそのほかにも、クビに絶対ならない、給料はずっと上がり続ける、夕方5時きっかりに帰れるなど、体制外の人間からは想像もできないような保証がたくさんあります。

軍隊の待遇も非常にいい

私のいとこは国営の某大手銀行の海外支店で支店長をしており、35歳で年収が約150万元(2250万円、1元=15円換算)あります。確かにゴールドマンサックスなど外資系金融に比べたら低いかもしれませんが、絶対クビにはならず、定時に帰れて、しかもマンションをもらえて、さらに運転手つきの車ももらえるのですから、悪くはありません。

軍隊の待遇も非常にいいようです。私の親戚の一人が北海艦隊(中国人民解放軍海軍3大艦隊のひとつ)で幹部をしています。さすがに現ナマ入り高級バックは配らないようですが、マンションや車はもらえますし、その他、軍の支給品や保養施設を使えたりします。その車に軍のナンバーがついていると、高速道路が無料になるといった特権もあります。

ちなみに、中国では金を掘れるのは軍隊の武装警察だけです。武装警察黄金部隊というチームが存在し、中国すべての金鉱を独占しています。掘っていいのは自分たちだけで、掘って売るだけですから、絶対に儲かります。さらに、内モンゴルとの国境線はすべて軍隊が守っていて、守っているだけではつまらないので、国境線周辺を畑にして軍隊だけが耕していいことになっている。この畑で小麦を大量に生産しています。このような利権がたくさんあって、軍隊はとても潤っています。

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