32歳高年収女子は「高飛車女」と判定された! 東京カレンダー「崖っぷち結婚相談所」<4>
前回の容赦ない直人のアドバイスに従い、あれから服装などはかなり変えた。今日も明るいパステルピンクのブラウスを着ている。
ガラリと変わった自分の姿を見て、あの辛口の直人は一体どんな反応をするだろうか。杏子は楽しみで仕方がない。
相談所へ向かう足取りは、羽のように軽かった。
杏子への辛辣なダメ出しが、ついに始まる!
「杏子さん、あなた、だいぶ勘違いされているようですね」
通された部屋に入るなり、直人は挨拶も抜きに厳しい口調で言った。
「は……?」
「あなたを見くびっていた僕にも責任がありますが、事態を深刻に考える必要があります」
「何ですか、突然?あ、飯島さんとは、上手くいき……」
「だから、それが勘違いなんです」
直人は、杏子が言葉を言い終える前に、苛立った口調で遮った。「あなたは何も理解していない。飯島さんは、ご登録頂いている男性の中でも、トップクラスです。収入・年齢・ルックス・性格、すべてパーフェクト。ただ、ご多忙と真面目すぎる性格ゆえに、結婚相談所を利用してるんです」。
「もちろん、良い人なのは分かってますよ。2回目のオファーが来たなら、私もお受けするつもりです」。杏子も強気で言った。
直人の言う通り、飯島は中々の優良案件だった。そんなことは分かっている。自分と釣り合うと思える男など滅多にいないのだから、杏子が好感を抱いたということは、それなりのレベルの男だという何よりの証拠なのだ。
「だから……。飯島さんから、2回目のオファーなんて来てませんよ。それどころか、もうあなたの様なタイプの女性は、どうか推薦候補者から外して欲しいと仰っています。人のよい飯島さんが、そんな意見を寄せられたのは、初めてです」
「え……?ちょっと、理解できないんですけど、どういうことですか?」
「杏子さん、そもそも恋愛市場で言うと、あなたより飯島さんの方が、ずっと市場価値は高いんですよ。分かりますか? 簡単に言えば、飯島さんに好感を持つ女性は、あなたに好感を持つ男性より、恐らく10倍ほど数が多い。つまり、飯島さんは、あなたよりずっとモテる。これで理解できますか?」
杏子は絶句した。一体、直人という男は、何を言い出すのだ。こんな暴言を吐かれるのは、人生初だ。「ちょっと……。私は料金をお支払いしてサービスを受けているんですよね。これは、モラハラと言うんじゃないですか……」。