32歳高年収女子が結婚相談所で知る衝撃事実 東京カレンダー「崖っぷち結婚相談所」<2>
自分は間違っていた。「結婚」は、難題であった。
「はぁ……」
オフィス近くの『メゾンカイザー カフェ』で、杏子は一人大きな溜息をついた。
最近、めっきり溜息がクセになってしまっている。溜息をつくと3歳老けるなんて噂は信じないが、確かに30歳を過ぎた女が溜息をつく姿は美しくはないだろう。
まっすぐ家に帰るのが躊躇われ、仕事終わりに一人で軽い外食をとる理由は、部屋が結婚相談所のパンフレットと恋愛マニュアル本が溢れているからだ。先日夜中のネットサーフィンに熱中し過ぎた結果、ざっと10社近くの結婚相談所のパンフレットと、アマゾンで頼んだ恋愛マニュアル本が10冊ほど一気に届いた。
杏子がパンフレットや恋愛マニュアル本を見てまず気づいたことは、このご時世、結婚はやはり簡単に成せる業ではないということだった。だからこそ、結婚相談所というビジネスが栄え、本がここまで売れる。それは紛れもない事実だ。
しかし、仕事後のこの疲れた時間に、結婚という難題に向き合うほど、杏子はタフでもない。特に恋愛マニュアル本を見ていると、仕事で資料を作ったりプレゼンをする方が、ずっと簡単なことのように杏子は思えた。