大手行が相次ぎ減額 直撃する二つの難題

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大手行が相次ぎ減額 直撃する二つの難題

サブプライムローン問題や消費者金融事業の不振を受け、大手行の間で業績予想の下方修正が相次いでいる。(『週刊東洋経済』11月17日号より)

大手銀行の間で業績予想の修正が相次いでいる。三井住友フィナンシャルグループを皮切りに、住友信託銀行、りそなホールディングス、三菱UFJフィナンシャル・グループが10月中に業績修正を発表した。

気になるのは修正の内容だ。中でも、三菱UFJは2008年3月期の連結純利益予想を2000億円も下方修正。住友信託も同様に300億円引き下げた。三井住友は、リース子会社の合併に伴う特別利益が1000億円計上されるため、純利益こそ上方修正したが、経常利益は400億円の下方修正を行った。

サブプライムの余波

この3グループにはある共通点がうかがえる。一つは米国のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題の影響だ。

三菱UFJは同ローン関連商品に9月末で約2600億円を投資しているが、9月中間期に約50億円の償却損を計上する。三井住友も、証券化商品の売却損やサブプライムローン関連資産を担保にしているローンの引き当て処理などで合計約320億円を計上。一方、住友信託は売却損や引き当て処理で約90億円の損失を計上する。

もっとも、それらより深刻な影響を受けそうなのが、コンシューマーファイナンス事業に絡む損失だ。前出の3グループは連結内に消費者金融会社やカード会社などを持つか、大口融資先の一つに消費者金融会社を抱えている。サブプライムと違い、投融資という形で邦銀はより深くコミットしているうえ、貸金業法改正の影響がどれくらい広がるか見えない部分もある。

三菱UFJは、子会社である三菱UFJニコスが早期退職募集や過払い利息返還損失引当金を積み増したことなどで約900億円の減益要因となる。三井住友も資本提携先のオーエムシーカードの株価下落に伴う減損処理440億円を計上。住友信託は、アイフル向けなどの融資引当金積み増しで300億円の費用処理を行う。

みずほフィナンシャルグループは修正を発表していないが、大口融資先の不良債権処理費用やサブプライム関連などでそれぞれ数百億円規模の影響が出る見通しだ。

各行とも問題の広がりによってはさらなる下方修正もありうる。注視が必要だ。

山田 徹也 東洋経済 記者

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やまだ てつや / Tetsuya Yamada

島根県出身。毎日新聞社長野支局を経て、東洋経済新報社入社。『金融ビジネス』『週刊東洋経済』各編集部などを経て、2019年1月から東洋経済オンライン編集部に所属。趣味はテニスとスキー、ミステリー、韓国映画、将棋。

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