自律回復へ正念場を迎えた個人消費 景気・経済観測(米国)

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もちろん、消費の先行きに懸念材料がないわけではない。

まず、足元の貯蓄率が既に歴史的に低い水準まで下がっている点である。2月の貯蓄率は2.6%と、1月(2.2%)から上昇したとはいえ、依然2007年12月以来の低水準にとどまっている。貯蓄率が一段と低下する余地は乏しく、資産増による消費の押し上げ効果は期待しづらくなりつつある。個人消費が増勢を維持するためには、今まで以上に雇用・所得環境の改善が不可欠となる。

ネガティブサプライズとなった3月の雇用統計

その点で、足元の雇用回復ペースが弱まったことは気がかりである。3月の雇用者数は前月差+8.8万人と、2月の同プラス26.8万人から急減速した。堅調な拡大が続くと見込んでいた市場の事前予想(同プラス19.0万人)を大きく下回った格好だ。1~2月の雇用増加ペースは合わせて6.1万人上方改訂されているが、それを踏まえても弱い結果である。

また、時間当たり賃金は前月からほぼ横ばいで推移した。2月の結果も下方改訂され、足元で賃金の伸びが鈍化している様子が窺える。今回の結果だけを見て労働市場の改善ペースが失速したと結論付けるのは早計だが、年明け以降、雇用や所得の着実な回復が消費拡大につながるという良好な関係が続いてきただけに、今後の動向には注意が必要だろう。

さらに、3月のカンファレンスボード消費者信頼感指数が前月差マイナス8.3ポイント(2月:68.0→3月:59.7)と大幅に低下するなど、消費者マインドが足元で弱含んでいる点も懸念材料である。内訳を見ると、6カ月先の見通しを示す期待指数が大きく落ち込んでおり、3月1日に開始された連邦政府の歳出強制削減など、財政問題の先行き不透明感が消費者マインドの重石になったと考えられる。

歳出強制削減の影響は4月から徐々に現れ始めるとみられていることから、それが人々の消費行動にどの程度のインパクトを及ぼすのか、もうしばらくは見極める必要がある。

過去3年間、米国経済は年明けに回復期待が高まりながら、春先になって景気が失速するというサイクルを繰り返してきた。今年こそは4度目の正直となるか、今後数カ月間が米国経済の自律回復に向けた正念場になるとみている。

服部 直樹 みずほ総合研究所エコノミスト

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はっとり なおき

2009年神戸大学経済学部卒業後、みずほ総合研究所入社。12年11月よりニューヨーク事務所駐在。米国担当エコノミストとして、雇用動向や個人消費、住宅市場、金融政策などの分析に従事。

 

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