ルネサスが3200億円の大勝負に賭けるワケ 米半導体インターシルを狙った背景は?

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一方のルネサスは「マイコン」と呼ばれる半導体に強みを持ち、トヨタ自動車、日産自動車、米ゼネラルモーターズ、独ボッシュや独アウディなどが主要顧客だ。顧客や製品面における重複は少ない。

顧客網や製品網を相互に活用できれば、事業規模を拡大することも可能だ。加えて、生産体制や資材調達の最適化、経費の効率化などコスト面での統合効果によって、営業利益ベースで約170億円のシナジーが見込めるという。

ルネサスはなぜ、インターシルを買収先として選んだのか。「いたずらに規模の拡大を目指すM&Aは評価しない」。2016年6月にルネサス新社長に就任した元カルソニックカンセイCEOの呉文精氏は、就任会見でこうしたM&A哲学を披露。ルネサスが高いシェアを保つことのできる戦略セグメントにおいて、相性のいい企業の買収を検討してきた。

市場のシェアを重視するM&A戦略

マイコンなどを製造するルネサスの那珂工場(撮影:梅谷秀司)

電力を制御するために用いるアナログ&パワー半導体は、家電や自動車の省エネルギー化を実現するために重要な半導体であり、環境意識が高まる中で今後高い成長率が見込める有望市場だ。

頭脳に当たるマイコンとのセット販売も可能であり、「アナログ&パワー半導体の分野は強化が必要」(柴田英利CFO)と以前から重要視してきた。インターシルの買収により、長年の悲願を達成しようという目算だ。

ただ、インターシルも順風満帆というわけではない。売上高はPC市場の縮小などを受けて2011年の7.6億ドルから一貫して減少傾向にある。ルネサス同様、不採算製品からの撤退を続けてきたことがその原因だ。

その結果、利益体質は確かに改善した。過去の営業利益率を見ると、2012年0.6%、2013年2.3%、2014年が13.2%。昨年は訴訟に対する引当金8110万ドルを計上したことから1424万ドルの営業赤字に陥ったが、引当金がなければ営業利益は6686万ドル、営業利益率は12.8%だった。

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