大統領選ヒラリー敗北で「ダウ暴落」の真実味 ヒラリーとトランプ、支持率再拮抗の「謎」

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本題からややずれるが、9日の米株の下落(NYダウは前日比394ドル安)にも関係するので、ここで触れておきたいのが、任期わずかのオバマ政権の緊急課題だ。それは「二人のミレニアル主導者」への対応である。特に切迫しているのは度を越した北朝鮮の党委員長・金正恩だ。核実験は400ドル下落の一つの理由だ。そして、その先にあるのが、議会がテロ遺族の賠償金請求を可能にする法案を可決したサウジアラビアである。

金正恩もサウジの皇太子も、アメリカ文化に憧れる?ミレニアル世代である。オバマはミレニアル世代にも近いジェネレーションXの世代。だが、これから米国は非戦的なオバマの世代から、古い世代へ大統領が逆戻りする。これに焦る金正恩に中国がどう出るか。先のG20をみても、ここぞとばかりに各国が動き始めた様子である。

力を持つブーマー世代と、若いミレニアル世代の間で悩み続けたオバマ。彼が最後に北朝鮮をどうするか。もし北朝鮮に日本株が反応しないなら、個人的には安心というより、日銀の買い支えで、政治リスクへの感覚が麻痺する副作用の方が心配だ。

そして、重要な9月11日のテロの式典に出席したヒラリーに信じられないことが起きた。ヒラリーは式典の途中で気を失いかけ、そのまま退席したのだ。健康問題を攻撃材料にされている彼女としては、絶対に避けたい出来事である。もしそれが出来なかったのだとしたら、ここまで気丈に頑張ってきた彼女に、何か異変が起きている可能性がある。

ヒラリーの支持率は、なぜ落ちてきたのか

金融市場関係者をみると、元々ヘッジファンドの一部には熱烈なトランプ支持者がいる。一方で、一般的な順張り中長期バリュー投資(いわゆるパッシブ型)運用者は、ヒラリー勝利を前提にしてきた。

昨年来、高い手数料(利益の20%)なのにパフォーマンスが悪いヘッジファンドからパッシブ運用への資金移動が顕著になった。そんななか、民主党大会が終わり、支持率でヒラリーがトランプを引き離した頃から相場は上昇。ここではパッシブ型運用者が、大統領選の不透明感が和らいだことで(ヒラリー勝利へ)いよいよ新しい相場に向け動き出したといわれている。

では、選挙戦の形勢が変わればどうなるのか。大統領になったトランプが、予告どおりイエレン議長をクビにすることを想定するのは早いだろう(そのときのダウは2000ドル程度下落?)が、政治的思惑は、これまで以上にマーケットに影響を与える。ただし初動はヘッドラインに反応する電子取引が支配する。我々はその値動きに慌てるのではなく、背景の政治情勢を理解することが、より重要になっている。

ここでもう一度選挙戦を整理すると、金銭面で共和党を支えているといわれるのは、石油化学大手Koch industries のコック兄弟。その一人、デービット・コック氏は、自身の応援した候補者がことごとくトランプに敗れ去った後、ヒラリーとトランプの対決を”癌か、心筋梗塞かの選択“と表現した。また中立的な評論のなかにはevil(邪悪)とstupid(愚か)の争いと 揶揄するものさえあった。

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