アドバイザー活動と並行して取り組んでいるのが、「起業」だ。スタートアップ企業を理解するにはまず自分でやってみるべきだ、と、留学1年目の冬からスタンフォードの博士課程の中国人学生と組んで、会社を立ち上げようとしているが、まだ形にはなっていない。
水島さんは、スタンフォードで起業のプロセスや方法論を学んだものの、起業で最も重要なのは、「自分の内から来る、“真の情熱”を見極めること」ではないかと感じている。それを実感したのは、著名な起業家のスティーブ・ブランク氏の話を聞いたときだ。
ブランク氏は、シリコンバレーで20年以上にわたって、8社のハイテク関連のスタートアップ企業に従事し、現在は、スタンフォードなどで教鞭を執っている「起業家教育の第一人者」。学生に向けた講演で、次のように語った。
「ある日、卒業を控えた学生が相談に来て、マッキンゼーに就職するか、今友達とやっているベンチャー企業を続けるか迷っていると聞いてきた。私は大笑いして、『君にはチョイスはないよ』と言った。
起業は天からの「啓示」みたいなものだ。とても経済合理的には説明できないものだ。人生の選択肢として、経済合理的な選択=マッキンゼーと迷っているのならば、起業という選択肢はない」
スタンフォードでは、「Be Yourself」=ありのままの自分であれ、と教える。水島さんは、スタンフォードでの学びを契機に、さらに深く自分を見つめる必要性を感じているという。
「自分をもっと因数分解しなくてはと思いますね。弁護士として、あるいは、1人の人間として、本当にワクワクすることは何だろう。自分の中から湧き出る思いを、どうやって形にしていけばいいのだろう。『自分と深く向き合って、ありのままの自分でありなさい』というのは、簡単そうに見えて、とても難しいと感じます。これは数あるスタンフォードでの学びの中で、最も大切な学びだと思っています」
※佐藤智恵さんによるこの連載は、今回でいったん最終回となります。ご愛読いただきありがとうございました。今秋、この連載を大幅に加筆し、書籍として発売予定ですので、どうぞご期待ください。
今連載についてのご意見、ご感想、今後のご要望等ございましたら、ぜひこちらまでお寄せください→ mba-sato@toyokeizai.co.jp
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