2月22日の日米首脳会談でオバマ大統領は安倍晋三首相に対日LNG輸出を確約することを避けた。しかし、その理由の一つは、大統領が環境保護ロビーを怒らせないため、すべての法的手続きを踏んでいることを示したかったためだろう。もう一つは、環太平洋経済連携協定(TPP)や普天間基地移設など、米国にとって重要な問題で安倍首相が約束を実行できるかどうかを見極めるまで、大統領がLNG問題に関して約束することを差し控えるように望んだ当局者がいたからだ。
一方、ますます多くの業界団体がLNG輸出賛成に回っている。全米製造業者協会は「LNGや石炭、その他の製品を制限しようとする提案は米国に広範な悪影響を及ぼすので、退けられるべきだ」との見解を発表。これを受けて、輸出量の制限を望むダウ・ケミカルは同協会を脱退した。ただ、ダウを含む約160社が加盟する米国化学工業協会は2月6日にLNG輸出を支持する声明を発表し、「役員会は、天然ガスのいかなる新たな輸出禁止や制限にも反対することで全会一致した」とした。
経済的恩恵以外にも、米国政府はLNGを輸出することに安全保障上の恩恵があると見ている。LNGを輸出すれば、ほかの国々が「原油の暴君ら」への依存度を減らし、国際原油価格を押し下げることができる。米国がエネルギーの自給自足ができるようになれば、ホルムズ海峡から東太平洋までの公海航行の自由を保護するために高コストの海軍を維持することへの支持が弱まるかもしれないとの懸念が日本にもあるが、日本国際問題研究所の小谷哲男氏の見方は違う。この懸念について同氏は、「原油以前の時代からの航行の自由に対する米国のコミットメントを理解していない」と話している。
(撮影:Getty Images =週刊東洋経済2013年4月6日号)
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