ポケモンGOで跳ねた任天堂の適正株価とは? このヒットだけでは生き残れない

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つまり、同社の「成長ストーリー」(=おカネ(自己資本あるいは他人資本)を使ってどう成長させるか。専門用語ではエクィティ・ストーリーという)が求められているわけである。

では今、任天堂にとって必要なことは何か。それは二つある。第一に、「ビジネスモデルの転換」、第二に、「スマホアプリにおいて自社開発能力を確立すること」である。

旧来型のゲーム専用機メーカーの典型的なビジネスモデルとは、任天堂が生み出したものだった。

すなわち、自前のハードを売って、契約を結んでいる他社(サードパーティ)のソフトメーカーから、ソフトの委託生産料やロイヤルティ(自社ハード対応ソフトを開発する際のロイヤリティ収入)を取って稼ぐ。あるいは、自社ソフトを売って稼ぐ。ハードでは収支トントン(あるいは赤字)に押さえて、その機種モデルを世に広め、ソフトで稼ぐ。いわば、ハードとソフトを一体と考えて売り、それで利益を上げるというシステムである。

任天堂は「従来型のビジネスモデル」を捨てよ

しかし、このビジネスモデルは、スマホ向けのゲームコンテンツの人気が高い現状では、世界的に通用しなくなりつつあるといえる(ただし、欧米で「高精細な映画的なゲーム」を楽しめる高性能ゲーム専用機をつくることができるソニーとマイクロソフトは例外である)。

もはや、据え置き型ゲーム機は、昔のように「面白い仕掛けをもったゲームソフト」をもってしても、売れなくなってきた。例外であったのが任天堂の「Wii」だったが、そのブームも終焉した。実際「Wii U」は失敗に終わった。

任天堂のこれからの活路は、「携帯型ゲーム」で利益を生み出すことである。自前で、「斬新な面白さをもったゲームソフト」を生み出す機能がついた携帯ゲーム機をつくり、大きな利益を享受することができるならよい。だが、世界的人気を誇った「DS」の後継機の「3DS」は不発なので、あまり期待はできない。自社製品である「3DS」向けの任天堂製ソフトも、画期的な面白さをもったゲームはないといっても過言ではない。

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