ロシア政府は、投融資や企業進出を誘致するために躍起になっている。発展途上国が海外企業の誘致のために税制メリットや各種インセンティブについて優遇条件を出すのは常識で、ロシアは中国や東南アジアと比べると動きが遅く、企業誘致については出遅れていた感がある。世界の経済発展の中心は中国から東南アジア、インドへと拡大していることを鑑みると、極東ロシアへの選択肢はよほどのメリットがない限りないだろう。遅きに失した印象は強いが、検討に値することは間違いない。やっと普通の国家といえる経済感覚を持つようになってきたと感じる。
ところで、現在のロシア経済は、欧米の経済制裁による通貨の下落、海外投資家の資本逃避、公的債務返済の遅滞などに苦しんでいる。これまでは資源ブームに支えられたので安穏としてきたが、原油価格の回復がみられずそうとう深刻な状況である。
2016年3月までの資本流出は6000億ドルに達すると想定されている。資源ブームで貯め込んだ外貨準備4500億ドルに加えて、豊富な返済原資があるとされるので、短期的には通貨危機発生リスクは少ないだろう。しかし、八方ふさがりの経済環境から極東地域の開発、海外企業からの企業誘致が不可欠になっている。
影響大きい経済制裁の影響
なぜそのような状態に陥っているのか、簡単におさらいしよう。資源高騰とプーチン大統領のリーダーシップが、ロシアの経済成長を支えてきたのだが、その中で発生したのがウクライナ危機。もともと米国はロシアによる旧ソ連諸国への影響力拡大に強い懸念と抵抗感を持っている。
「クリミア半島を力で奪取したのは国際法に違反している」という米国の主張と「クリミア半島は歴史的にロシアの一部であり国民投票による民衆の意志を尊重するのは当然」というロシアの主張は折り合うことはない。経済制裁はさらにエスカレートし、プーチン大統領は逆に報復措置として欧米からの農産物・食料品の輸入を禁止した。
その結果、欧州とロシア間の経済関係は大きく損なわれた。中国と韓国はそうした状況を利用して「漁夫の利」を得るべくEUとの貿易を拡大し、同時に対ロ貿易も増加させた。米国との共同歩調を優先させた日本は、残念ながらそのチャンスを生かすことはなく、2015年度の対ロ取引は2014年度比で59%も落ち込む結果となった。昨年の東方経済フォーラムでは多くの企業関係者が参加したが、経済的な成果があったとは言えなかった。
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