東方経済フォーラムは、ロシアにとっては欧米からの投融資が見込めない状況を踏まえ、極東の経済関係を強化するという狙いがある。プーチン大統領が昨年のフォーラムで話したように、極東の未来を国全体の社会経済発展の重要な中心の一つとしてとらえており、自由港体制を極東の主要港湾全体に拡大することを挙げた。同様に極東地域のビジネスのために国境を通過するプロセスが著しく簡略化、軽減化することも強調した。
たしかに今回、かなりインセンティブ条件を改善して海外進出企業の抱き込みを画策している。中国や韓国からの投融資は活発になることが予想されるが、ロシアとしては、日本側の思い切ったインフラ投資や技術移転、自動車産業のノックダウン工場などの進出に期待しているのである。
過去20年間、弊社AMJは沿海地方のタングステン資源に注目し、年間3000トンのタングステン精鉱の長期取引を成功させてきた。ODA(政府開発援助)の仕組みやJOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)の技術支援のプログラムを活用しながらの歴史である。現在、インフラ関連や医療や教育などの分野のプロジェクトもあるが、私は電池分野や金属リサイクル産業などの分野が有望であると考えている。9月13日に開催する「ロシアリサイクル業界セミナー」ではロシアの金属産業リサイクル企業など、情報の少ない資源大国ロシアの静脈産業について紹介する。関心を持つ方は案内を見ていただきたい。
民間企業を活用する上で必要な仕組みや知恵
さて、東方経済フォーラムの「お祭り騒ぎ」は成功裏に終わった。今回の会談ではどうやら裏約束が確定したようにも憶測される。ウィンウィン(WIN-WIN)の経済協力を進めることが、実は四島一括返還の近道なのである。ロシアは「経済制裁」「原油安」「ルーブル安」の三重苦で困っている。まさに今こそ、大型経済協力の見返りに「四島返還」問題の解決に向け一気に動くべきだ。
その際、民間企業の活力を生かすことが不可欠。ただ、これから中小企業などが進出するためには、日本貿易保険(NEXI)の貿易保険を活用するなどの知恵が必要だし、開発のための「枠組み」を考えるべきだ。民間企業は経済合理性のない事業はできない。リスク回避の仕組みを構築することが、日ロの経済協力をしっかりと推進するためには必須だからだ。
日本企業や調査団によるロシアへの訪問頻度も、またその逆も少なすぎる。日露の交流はセミナーや国際会議が中心で「物見遊山」で終わる場合が多い。マスコミや報道陣もピンポイントで参加するだけである。今後は双方の交流を増やし、情報の共有を推進していくことも大切である。繰り返しになるが、ロシア取引の要諦は「焦らず、慌てず、諦めず」なのだ。
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