3.11から2年後、千年規模で問う復興のかたち
歴史映画の名作が教える、あるべき共同体とのつきあい方

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避難3年目に入る被災者、望まれる復興の多様性

山下祐介、開沼 博・編著 『「原発避難」論―避難の実像からセカンドタウン、故郷再生まで』(明石書店、2012年)

そして、同書の寄稿者の立場がそれぞれ異なるように、避難者が望む復興のあり方もさまざまだ。

富岡町の事例では、避難者どうしで一時的なセカンドタウンを県内(須賀川市)に樹立しようという提言がなされた。原地への復帰に長期間がかかるとしても、そうすることで元あった共同体を維持して、いつか故郷に戻ろうという試みである。

一方で飯舘村には、除染ではなく村民の生活支援に予算を充てるべきだという声もある。収入の途が断たれ、除染が終わっても帰還できるか不透明な現在、むしろ自分の土地を国や東電に買い上げ(借り上げ)てもらってでも、まずは必要な資金を配ってほしい。その上で原地復帰を望む人は、適正価格で土地を買い戻せばよいという考え方だ。

あくまで除染計画を進める村長に対しては、「村ではなく、村民のことを」考えよとの批判も寄せられたという。

被災した方々に、少しでも平穏な日常と、幸せな生活を取り戻してほしい。それは、心ある人全員に共通した願いだろう。

しかし復興への支援は、可能な限り「個人」を単位として、ひとりひとりが独自にその使途を決定できる「現金」を、直接給付するかたちで行われるべきなのか。

それとも、あくまで彼らが生きる「共同体」を存続させることを前提に、居住可能な「土地」を取り戻すことに、力を注ぐべきなのか。

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