途上国のヘルスケアに日本は貢献できる 国連の「持続可能な開発目標」でも推進役

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――グローバルヘルスの新薬開発に関して、日本にはGHITファンド(公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金)があります。

GHITファンドは、ゲイツ財団と日本の大手製薬企業、日本政府の共同出資によって設立されたファンドですが、日本の医薬品に関する知財を世界に役立てるのがミッションです。医薬品の研究開発から、患者のアクセス、デリバリー(デリバリーの実務はADP(新規医療技術のアクセスと提供に関するパートナーシップ)が実施)までを兼ね備えた組織は世界にも例がありません。日本政府に先見の明があったと思います。

GHITファンドでは結核、マラリア、NTDsの医療技術開発に力を入れていて、貧困エリアに広がっている疾病治療薬開発への支援を行っています。資金面、医療面でのパートナーシップを強めて社会の役に立っています。同様の仕組みを他国に複数作るというよりは、GHITのパートナーを増やしていくことが重要だと考えます。

グローバルヘルスにかかわるゲイツ財団の役割は大きいですね。20年前はこれほど大きな民間の国際的な慈善団体はありませんでした。現在、世界最大規模の財団ですし、リーダーとしての存在感、資金、人材、重大課題の推進力、健康を重要課題のさらに上方に位置づけるためのポジティブインパクトがあります。GHITファンドのパートナーとして、満足できる役割を果たしていると思います。

すべての人の健康問題に焦点を当てた

――SDGsとは、また、グローバルヘルスに与えるインパクトとは

昨年9月、国連でSDGsが採択されました。貧困の撲滅やそれに直結する健康的な生活、ジェンダーなど世界的に普遍的な目標を設定し、2030年までに解決を目指すというもので、全政府が実行していくと宣言しました。これはSDGsに強さと正当性を与え、各国政府に実行の義務感を持たせる上で非常に重要でした。2015年を目標としたMDGs(子を持つ母親の健康問題などを提起)と比べても、すべての人の健康問題に焦点を当てたという点で、より明確で強いインパクトがあります。

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