むろん、このような事件の一番の被害者は被害女性ですが、家族もある意味で被害者だと指摘する人は多いのに、一定の力になりません。
成人した子どもの24時間の行動や人間関係に、責任を持てる親はいますか。それを知っている大人たち、とくに加害者の親の努力や大変だった来し方を、経験しなかったか想像すらできないお気楽な暇人に限って、その親をパパラッチの対象にして、話題に盛り上げる人たちが多いことに、ある種のさもしさを禁じ得ません。
いくつかの有閑マダムの会やスポーツジムの後の茶会、昼間のスーパー銭湯のサウナの中などでは、このような親たちへの揚げ足取りで花が咲き、皆さんとても情報通だと聞いています。同じ親として女性として、理解を示す視点が些かもなく、むしろ有名人の不幸を見て自身の欲求不満を慰めているかのようです。
そして、これらの人たちの情報源は主にテレビなのです。50年以上も前に評論家の大宅壮一氏はテレビの低俗化を嘆き、そればかり見ていると想像力や思考力が低下するという危惧を、(日本人の)「一億総白痴化」という言葉で警告しました。
この警告が全然色あせていないことは、本や雑誌を読まなくなった人もテレビの情報垂れ流しで、右へ倣えの無責任な評論家と化している人が多いことで判ります。もちろん、テレビ業界にも誇りをもって、高い志をもって質の高い番組を作っておられる方はいらっしゃるでしょう。しかしテレビ業界が総体として、最も考えない人のための、最も知的水準の低い衆愚メディアに転落していっているようで、残念でなりません。
加害者の親に責任を問うのは日本の国格を貶める
こちらバンクーバーで何人かの人に、成人した子どもの犯罪と親の謝罪に関しての報道の仕方について聞いてみました。バンクーバーでそのような報道を見聞きしたことはなく、自身も親が謝罪する問題とは考えないということでした。
先日まで過ごしたワシントン州ではどうか聞いてみようかとも思いましたが、ワシントンの友人は、テレビの報道は、つまらない番組が多く、ウソや時の政権に都合よく編集された報道が多いという理由で家にテレビも置かない人なので、聞くのをやめました。
これとは対照的に、日本では、テレビが一番のお友だちという人や、ワイドショーに影響を受ける人の割合が、かなり多いように感じます。ワイドショーにも素晴らしい企画が多いことは認めますが、テレビがより良く変われば、多くの視聴者も変わるのは確実だと思われます。
有名人の成人した子どもの犯罪に鬼の首を取ったかのように、または魔女狩りのように、民放局揃ってその家族まで執拗に追いかけています。テレビが「数千万同調総評論家」に仕立てているに等しく、その罪は空恐ろしくさえあります。赤信号は皆で渡ってもダメなことはダメなのです。
日本は、ヒト・モノ・コトのあらゆる分野で先進国であり、成熟した社会であると国際的にも認められているお国柄です。成人した犯罪加害者の親族に対するあらぬ詮索や批判は、まったくの時代錯誤でありお門違いであるという常識を、一時でも早く多くの市民の間で幅広く、共有できる社会になるよう願ってやみません。
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