中国は、なぜウーバーを叩きだしたのか

「郷に従えない」企業は生き残れない

テンセントとタオバオは激励以上のことをしたようだ。カラニックは昨年の覚書で、テンセントがウーバー中国法人の微信アカウントを「ブロック」してマーケティングツールを断ち切ったと記している。テンセントはブロック実施の10日前、ウーバーが微信を「悪意あるマーケティング」に用い契約条件に違反したと主張した。ウーバー側はその主張を否定した。

タオバオでは、滴滴やウーバーのドライバーが架空の予約を受けて多額の収入が得られるようアカウント偽造を施したスマートフォンやプログラムが販売された。タオバオは偽造アカウントの削除を行う作業を進める際、ウーバーよりも滴滴を優先した。

こうした事例が裁判沙汰になると考えるようでは、中国ではまだ新参者だ。中国の法制度の中で欧米の法律事務所が母国企業を救える確率は、後述のように、中国のテクノロジー市場で成功するのと同程度に低い。

「慣れる」ことなどできない

ウーバーのカラニックCEOは昨年10月、「中国では競争の仕組みが違う。欧米の企業として慣れねばならないことがある」と述べた。

この発言は、まるで初めて火を見た原始人のようだ。ボーイングやコカコーラなど米国企業が1970年に契約を結んで以降、共産主義を掲げる中国で生き残っていく努力をしてきたにもかかわらず、米国のテクノロジー企業は20年以上、常に痛手を被ってきた。「慣れる」ことなどできないのだ。このような目に遭わないための唯一の方法は、初めから中国本土でビジネスをしようなどとは考えないことだ。

ウーバーを最終的に追い込んだのは7月に、一定以下の料金でタクシーを運転することを違法とする措置が導入されたことだった。ウーバーは基本的に「不当廉売」を止めざるを得なかったのだ。この点は滴滴も同様ではあったが、展開している事業の規模が大きかったことなどから、ウーバーとの競争で優位に立てた。

考えてみてほしい。不当廉売を違法とするのは中国当局にとっても好ましい措置だ。その一発で価格競争が止まり、ウーバー失墜と滴滴生き残りが濃厚になった。さらに既存のタクシー業界の利益は守られ、反ウーバーの企業連合も強化された。

欧米のテクノロジー企業は中国で散々な目に遭った。グーグル、アマゾン、イーベイは潔く市場を諦めた。IBM、クアルコム、シスコの売り上げは減少し、中国政府から厳しい監視を受けている。20年にわたっておびただしいほどの海賊版を作られたマイクロソフトも苦戦。アップルは4月に「iBooks」と「iTunes Movies」のサービスを停止した。フェイスブックやツイッターは、参入すらできていない。

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