IT産業は米国の生産性向上に貢献していない シリコンバレーが米経済に貢献できない理由
多くの先進国に共通する問題
米中流階級の賃金の上昇にかつてほどの勢いがないことが問題となっているが、その大きな原因は労働生産性の伸び悩みにあるのかもしれない。
成熟した経済においては、生活水準の持続的な上昇のためには生産性の向上が必要とされる。だが米国における生産性の伸びにはブレーキがかかっている。
2004年までの10年間に労働生産性は年平均2.8%伸びていたが、2005年以降の伸び率は同1.3%に留まっている。何とかしてさらなる生産性の向上を図らなければ、生活水準の上昇は望めないという考えは広く受け入れられている。
だが、別の考え方をする人々もいる。たとえば、シリコンバレーの著名な起業家でベンチャーキャピタリストでもあるマーク・アンドリーセンは、情報技術(IT)の貢献は大きいのだが、賃金や生産性といった数字として表れていないだけだと主張する。
つまり公式な統計には、無料で使えるフェイスブックやグーグル、ウィキペディアなどがもたらす恩恵が十分に反映されていないというわけだ。このような、数字にはあまり表れないけれど生活は向上しつつあるという考え方は、IT業界ではかなり浸透している。
つい最近まで、生産性をめぐるこの論争に結論は出ていなかった。どの論者もインターネットが自分の生活にとってどれほど大きな進歩だったか(もしくはそうでなかったか)を個人的な経験から語るばかりだった。
だがシカゴ大学経営大学院のチャド・シーバーソン教授(経済学)は、科学的に証拠を分析した結果、生産性が伸び悩んでいるのは事実だと結論づけた。シーバーソンが2月に発表した全米経済研究所の研究報告書を見てみよう。