IT産業は米国の生産性向上に貢献していない シリコンバレーが米経済に貢献できない理由

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生産性の伸び悩みは多くの先進国で相前後して発生していることから、一般的な現象と考えられるとシーバーソンは指摘した。また、IT産業が米国ほど発達していない国でも比較的大きな生産性の伸び悩みが見られた。もし統計には表れていないだけで、IT産業において生産性が大きく伸びているとすれば、こんな現象は起きないはずだ。

「無料だから統計に出ない」のウソ

また、アンドリーセンのような楽観的な解釈を阻む問題もある。生産性の減速の規模はIT産業の規模と比べてあまりに大きくて、ITの進歩で埋め合わせるのは不可能なのだ。

シーバーソンによれば2004年末以降、生産性の減速によって米国の国内総生産(GDP)は少なく見積もっても2兆7000億ドル減少した。これは、それ以前の生産性の成長率が維持できたと仮定した場合と比べた数字だ。

シーバーソンの推計では、この減少分すべてを相殺するには、情報・通信技術を作り、提供する産業において消費者余剰 (消費者が支払っていいと思う価格と市場価格の差)が実際の5倍に達していなければならない。ITの効果は統計に表れないだけで大きいと言うにはあまりにも大きすぎる違いではないか。

それにIT産業の大半はフェイスブックと異なり、統計に表れるような(少なくとも部分的にはGDPに反映されるような)サービスで成り立っている。たとえば、配車サービスのウーバーは、無料のアプリを介して有料の乗車サービスを提供している。

フェイスブックやグーグル、ウィキペディアといった無料サービスも、たとえ間接的にであってもGDPの数字に表れるような価値をたくさん生み出している。これらのサービスを使いたいがために、人々はスマートフォンやブロードバンド接続やiPadに喜んでカネを出す。そして、その支出はGDPに算入される。

この視点から見ると、統計に表れるかどうかはそれほど重大な問題ではない。つまりは食べ放題のレストランに行くようなものだ。たとえチキンだけなら無料だったとしても、おいしい料理がたくさん食べられると聞けば消費者は「食べ放題」パッケージに多くの金を払う気になる。皿に取った一つひとつの料理の価格とは関係なく、お買い得だと思えるのだ。

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