ネットサービス「日本不発で中国成功」のわけ ネット先進国の根底にある強いスピリット
日本ではあまりうまくいったとはいえないが、中国で大成功したインターネットビジネスがある。今回は、そうした2つの事例を紹介し、その要因を明らかにしたい。
一つは、「エスクローサービス」(商取引する際、第三者を仲介させる決済サービス)であり、もう一つは「配車サービス」である。日本でのエスクローサービスは、約10年前から提供されており、「楽天あんしん取引」や「オークション宅急便」などがある。しかし現在、メインの決済方式ではない。一方の中国では、アリババグループのアリペイ(支付宝)を代表としたエスクローサービスの市場規模は2015年に11.8兆元(約196兆円、iResearch)に達している。オンラインでもオフラインでも現在の中国でメインの決済方式となっている。
中国政府は配車サービス合法化を決定
配車サービスについては、米配車アプリ大手のウーバー(Uber)が日本に進出しようとしたが、法律の制限やタクシー業界の抵抗によってなかなかうまくいっていない。一方、中国、特に大都市では、配車アプリを使わないとタクシーを拾えないぐらい普及している。
中国政府が2016年11月1日より配車サービスを合法化することを決めたこともあり、現在、配車サービスは最も注目されている市場の一つだ。たとえば、中国の配車アプリ最大手の「滴滴出行」は5月にアップルから10億米ドルの投資を得た後、先月ウーバー中国を買収した。合併後の事業価値は350億米ドル(約4兆円、中国電子商取引研究センター)。なぜ、こんなに早く成功したのだろうか。
まず、中国社会を理解するために、非常に重要なワードである「圏子」(チェンズ)を説明したい。
「圏」という字は、首都圏、文化圏というような広がりと範囲を意味するものである。中国語の圏子も簡単に言えば、人間関係の広がりのことを意味する。圏子は同程度の経済力、趣味・嗜好、ライフスタイル、考え方を持つ、場合によって助け合う、関係性が深い人間同士の集まりの範囲ということになる。
中国人にとって一番近い関係にあるのは家族、親友だが、その次に関係が深いのは同じ圏子に属しているメンバーになる。中国では、親しい圏子の人なら疑わずに信頼するが、圏子外の人をあまり信用しない。特におカネに絡む話であれば、圏子外の人に対しもっと不信感を持つ。
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