ネットサービス「日本不発で中国成功」のわけ

ネット先進国の根底にある強いスピリット

少しずつ改善されているが、大都市では、タクシーの利用マナーが大きな問題点となっている。やっとタクシーを拾っても、ドアを開ける瞬間、他人が平気に割り込む。知り合いの日本人は中国出張の際、この経験をし、「女性、年寄り、または列を守ろうとしている気が弱い人は永遠にタクシーを拾えないだろう」と慨嘆した。タクシー側も、空車を減らし、できれば一番効率よく走りたいし、偽札やつり銭が不足するリスクがあるため、できれば現金での受け取りを減らしたい気持ちもある。配車サービスはこうしたニーズを満たしたものだ。

運転席の光景(筆者撮影)

スマホのタクシー配車サービス「滴滴打車」のアプリでは、出発地と目的地を入力すると、通常1分も待たないうちに、来てくれるタクシーの運転手から電話がかかってくる。後は待っだけ。支払いもアプリで決済できる。現在、三級都市くらいまで、タクシーの運転席に2台のスマホが設置されるのが一般的だ。滴滴打車ともう一つのアプリに同時に登録し、自分の都合やルートにとって良いタクシー予約を選択し、タクシーの稼働率や乗客の満足度を向上させている。

自家用車を持つ人と利用者、双方がハッピー

そして、タクシーだけでなく、「ウーバー(人民優歩)」「滴滴快車」などでは、一般人も自家用車を使って他人を運ぶサービスの提供ができる。自家用車を持つ人は、通勤中、自分と同じ方向に行く人をついでに乗車させたり、休日に「一日ドライバー」になるだけで、気楽に小遣い稼ぎができる。基本的にアリペイで決済するため、支払いへの心配は不要だ。

筆者がインタビューした40代の富裕層の男性は、「乗客がいるので毎日丁寧に車を洗っている。気分もすっきりする」「職場の近くに同業者が多く、仕事の話をすると渋滞の待つ時間も短くなると感じるし、もしかして今後のキャリアに良いかもしれない」と話してくれた。「楽しいからやっている」感が伝わってきた。

乗客側も、料金は正規タクシー料金より安いし、車両数が多いので簡単に予約できる。そして、配車アプリの運営会社は、遠回りや接客態度に問題があるとバックアップしてくれるので安心できる。街中に立ってがんばって拾うことも、他人に横取りされる心配もしなくて済むのだ。2014年上海の自家用車は約183万台(ChinaDaily)、たとえば5%がこのサービスに参加すると、タクシーを加え、上海の人口一万人当たりのタクシー台数は59台に上がる。一つのアプリで都市の難題をだいぶ緩和できそうだ。

インターネットビジネスの成功の要因には、圏子外への不信やインフラの不備に基づくニーズがあったが、それだけが成功の要因ではない。アニマルスピリット(野心的な意欲)を加えたい。

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