膠着した市場が動き出すのは、いつなのか 注目を集める26日のFRBイエレン議長の発言

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したがって、これまで同様に、経済指標を精査したうえで、さらに海外情勢を考慮した上で金融政策を判断するとのスタンスは変わらないだろう。

問題は、経済指標次第としているものの、どの指標がどうなれば、どのようにするのかが明確に示されていない点である。

たとえば、9月2日に発表される8月の米雇用統計が強い内容になれば、9月のFOMC(米公開市場委員会)で利上げを決定するのか。あるいは、最近の経済指標全般が芳しくないので、見送るのか。

動きづらい地合いが続く

だがFRBの政策のスタンスや基準が見えない。また、経済指標が好転した場合、短期的には利上げは正当化されるが、長期的にはそれは正しい政策なのか。その判断もきわめて難しいだろう。

一方で、景気の鈍化あるいは金融市場の混乱がみられた場合、即座に政策を変更することも必要になろうが、それが政策そのものの信頼性の低下につながるようであれば、それはむしろネガティブに捉えられる可能性もある。そうなれば、それはFRBにとっては信頼の失墜であり、ECBや日銀と同じ道を歩むことにもつながる。現在のFRBはそのぎりぎりの線に居るように思われる。

いずれにしても、金融当局の政策の方向性をあらかじめ決め打ちし、その方向で投資戦略を組むことはできない。また現時点では、9月利上げを決めつけるほどの材料が整ったわけでもない。結局は動きづらい状況が続くだけである。

しかし、冒頭にも示したように、このような低ボラティリティの膠着相場が数カ月も続くことはないだろう。さすがに9月2日の雇用統計前後には、明確な方向性が出るだろう。リスクを第一に考慮するのであれば、やはり下方向へのリスクを念頭に入れることになる。このスタンスだけは、今後も当面は変わらない。
 

江守 哲 コモディティ・ストラテジスト

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えもり てつ / Tetsu Emori

1990年慶應義塾大学商学部卒業後、住友商事入社。2000年に三井物産フューチャーズ移籍、「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」としてコモディティ市場分析および投資戦略の立案を行う。2007年にアストマックスのチーフファンドマネージャーに就任。2015年に「エモリキャピタルマネジメント」を設立。会員制オンラインサロン「EMORI CLUB」と共に市場分析や投資戦略情報の発信を行っている。2020年に「エフプロ」の監修者に就任。主な著書に「金を買え 米国株バブル経済の終わりの始まり」(2020年プレジデント社)。

 

 

 

 

 

 

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