一流選手はなぜ”ミス”を引きずらないのか? 細貝萌とドイツ代表の心理操作術

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もちろんこの心理操作術を応用している選手は、彼だけではない。日本代表の細貝萌(独レバークーゼン)は、試合中にミスを犯した後の気持ちの切り替えに「パーキング」を使っている。

もともと細貝は繊細なタイプで、ミスをした後に心理的ショックを引きずってしまうのが課題の1つだった。いったい、どうすれば気持ちをうまく切り替えられるのか? そんな悩みを抱えていたとき、対処法を教えてくれたのが松本大学でスポーツ心理学を教える齊藤茂だった。

齊藤がアドバイスしたのは、次のようなことだ。

「ミスは頭の中の駐車場に一時停車しておいて、目の前のプレーに集中しよう。反省や修正は、試合が終わった後に好きなだけやればいい」

パーキングの技術は仕事にも応用できる

細貝はこれを辛抱強く実践して、見事に課題を克服した。

『Number(771号)』に掲載された細貝のインタビュー記事の中で、こんなメールが紹介されている。細貝が齊藤に宛てたメールだ。

「自分のファールから失点し、とにかく1度駐めておこうと、パーキングを使いました。試合で使ったのははじめてです。すぐには出てこなくて、失点して少し経ってから思い出しました。もう少し早めに、自然に使えれば、もっとうまく切り替えられた気もします」

この「パーキング」の技術は、仕事場にも応用できるだろう。上司に何か言われて腹が立ったとしても、専用の駐車場にしまっておけば、感情をコントロールできる。仕事のミスが頭から離れないときも、駐車場に押し込んでしまえばいい。

考えるべきでないときに、いくら熟考してもプラスにはならない。頭の中にいろいろな引き出しを作っておいて、必要ないときはそこにしまい込んでおけばよいだろう。

木崎 伸也 スポーツライター

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きざき しんや / Shinya Kizaki

1975年東京都生まれ。中央大学大学院理工学研究科物理学専攻修士課程修了。2002年夏にオランダに移住し、翌年からドイツを拠点に活動。高原直泰や稲本潤一などの日本人選手を中心に、欧州サッカーを取材した。2009年2月に日本に帰国し、『Number』『週刊東洋経済』『週刊サッカーダイジェスト』『サッカー批評』『フットボールサミット』などに寄稿。おもな著書に『サッカーの見方は1日で変えられる』(東洋経済新報社)、『クライフ哲学ノススメ 試合の流れを読む14の鉄則』(サッカー小僧新書)など。

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