コイントスの偶然よりも「自発的な決定」を
実際、1994~2008年シーズンの15年間で見ると、コイントスで攻撃権を獲得したチームが勝利する確率は59.8%だった。オフェンスの勝率約6割に対してディフェンスは約4割なので、なんと勝率に1.5倍の開きが生じていたのである。
OTに突入する直前まで両チームはほぼ互角だった(だからこそ同点になった)わけだから、運や偶然によってこれだけ露骨に有利・不利が発生してしまうのは不公平と言わざるをえない。これに対処すべく、NFLは10年シーズンから段階的に、コイントスによる不公平を軽減するためのルール変更を試みている。
さて、現実のルール変更の詳細にはこれ以上立ち入らず、ここからは経済学者が提案したユニークなOTの新ルールをご紹介したい。米コロンビア大学のヨンクー・チェ教授らの研究に基づいたアイデアだ。
ルールのキモは、攻撃権をコイントスという偶然には委ねず、当事者2チームに自発的に決めさせるということだ。
もちろん、OTではオフェンスが有利なので、何か工夫をしないかぎりどちらも譲らないだろう。そこで注目したのが、得点の成功確率を大きく左右する「相手ゴールラインまでの距離(ヤード数)」だ。
攻撃開始時のヤード数が増えれば増えるほど、オフェンスが得点できる確率は低下する。そのため、十分に長い距離を設定すれば、ディフェンスの方がむしろ有利になりうるのだ。
このように、攻撃権とヤード数を組み合わせることで、さまざまなルールを考えることが原理的に可能になる。そのうえでチェ教授らは、ケーキカット方式とオークション方式という、伝統的な経済分析に馴染みの深い、2種類の方法を考えた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら