なぜアメリカや韓国の歴史的失敗から学ばないのか
金融危機後のアメリカ国民は、所得が下がり続けている中で、量的緩和によってもたらされた物価上昇によって、生活が年々苦しくなってきています。同様に、金融危機後に通貨安を志向した韓国でも、国民は物価高に苦しみ、日本国民よりも悲惨な生活を強いられています。
それらの歴史的な過ちを検証せずに、なぜ安倍首相はアメリカの量的緩和に習えと、日銀に積極的な金融緩和を「強制」することができたのでしょうか。たとえ物価を無理矢理に上昇させることができたとしても、企業は従業員の給料を上げることは難しくなっているという歴史の教訓を、なぜ権威ある経済学者たちは学ぶことができていないのでしょうか。
そもそも15年ほど前にプリンストン大学のポール・クルーグマン教授が提唱した「インフレ目標政策(インフレ期待)」は、ここ10年の資源価格高騰の時代においては成り立っていません。先進国における「景気の拡大=所得の上昇」「企業収益の拡大=所得の上昇」という相関関係は、資源価格の高騰によって断ち切られてしまったのです。
また、安倍政権誕生以降、為替は大きく円安に振れていますが、この通貨安政策にも注意が必要です。お隣の韓国は為替介入により、2008年に通貨ウォンを対ドル、対円の双方で大きく値下がりさせ、その後も安い水準で推移するように誘導してきました。特に同じ輸出国としてライバルとなる日本の円に対しては、価格競争力で優位に立つために、ウォンの対円相場を必要以上に安い水準で推移するように、円買いウォン売りを断続的に繰り返してきました。
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