たしかに2008年以降、この政策が功を奏した格好で、輸出が拡大し韓国の経済成長にも寄与したことは事実でしょう。
通貨安政策は、格差を拡大させる
ところが、大幅な通貨安には大きな落とし穴がありました。それは、輸入物価が想定以上に上昇してしまうことです。韓国はエネルギーやコメ以外の穀物を輸入に頼っているので、大幅に通貨安が進んでしまうと、その悪影響は半端なものではありません。韓国の物価上昇率は急激にウォン安が進んだ2008年に前年比4.7%と急騰し、その後も上昇が続いています。金融危機直前の2007年からの物価上昇率は15.2%にも達し、国民の賃金は実質的には大きく低下してしまったのです。
サムスン電子や現代自動車などの大企業は、通貨安に支えられて輸出を拡大し、業績を伸ばすことに成功してきました。大企業に勤める社員の所得も、物価の上昇を上回る水準で増えていきました。しかしながら、大企業とその社員が経済的に潤うのとは反比例して、大多数を占める中小零細企業やその従業員は、物価上昇により経営や生活が苦しくなってしまいました。
つまり、国民全体で見ると、通貨安の恩恵が及んだのは、大企業に勤める約8%の人々だけであって、残りの92%の人々はむしろ通貨安の弊害から逃れることができなかったのです。通貨安政策には、格差を拡大させてしまう作用がある点は忘れてはなりません。
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