東大出身者がピアノ愛好家の頂点に立つ理由 大人を燃えさせる「アマチュアピアノ」の世界

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「大人のピアノ愛好家全体を見渡せば、子供のころピアノを習っていた男女比の影響から、女性比率が高いのですが、アマコンを受ける顔触れとなると男女半々。そしてアマコン優勝レベルでは圧倒的に男性比率が高くなります。しかも高学歴高収入の男性が多いのも特徴です。ここでのキーワードは“東大”でしょうか。東大には40年以上の歴史を持つ《東大ピアノの会》というサークルが存在します。ここの出身者の演奏水準が実に高いのです。音大に行ける実力を持ちながら、あえて勉学の道を選んだ彼らは、ある意味“学びのオタク”なのでしょうね。勉強同様、ピアノに打ち込む彼らの集中力は半端ではありません。

彼らのような“猛者達”を頂点として、アマチュアピアノ界には、実にさまざまなスタイルのピアノ愛好家が存在します。さらには経済力も大きく物を言います。なにしろ、アマチュアピアニストは、ピアノを弾いておカネを稼ぐどころか、弾くためにおカネを使っているのです。海外のアマコンに参加するには、参加費はもちろん、渡航費や滞在費など、かなりの額の費用が必要になります。これを負担できる経済力がなければ海外のアマコンに参加するのは不可能です。

私が参加している国内のアマコンですら、予選・本選と進むにつれて相応の参加費用がかかるほか、レッスン代やレンタルスタジオ代など準備にかかる費用はさらに大きく、つねに財布の中身とにらめっこです(笑)。それでもいつかは海外のアマコンに参加してみたいと思っています」

親の財力とピアノの微妙な関係

ここまでピアノにかける情熱には心底頭が下がる。しかし最近良く言われる、親の財力と子供の学力の関係にも通じるような。

「そのとおりです。“東大生の多くが子供のころピアノを習っていた”という話を聞きますが、そうではなく“子供にピアノを習わせる余裕のある家庭の子が、東大に入る可能性が高い”ということだと思います。それと、アマコンについて1つ付け加えておきたいのは、日本と海外のアマチュア規定の違いですね。日本では、音楽大学のピアノ科を卒業しているとアマチュアピアニストとはみなされません。つまり彼らはアマコンに参加できないのです。ところが海外の多くのアマコンでは、ピアニストを職業にしていないかぎり、どの学校のどの学部を出ていようとアマチュアピアニストとして参加できます。この認識の違いは大きいですね。

これはおそらく、音楽家育成の専門教育機関ととらえられている日本の音楽大学と、音楽を教養の一環としてとらえるアメリカなど海外の総合大学との考え方の違いなのかもしれません。もうひとつ決定的な違いは、日本では“ダブルスクール”が認められていないこと。海外では“ダブルスクール”が当たり前で、アマコン上位入賞者たちの多くは、医学部や理工系学部などと音大を掛け持ちして学んだ“ダブルスクール”出身者たちです」

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