上野の音楽祭が10年目、散財を厭わないワケ インターネットイニシアティブの鈴木幸一会長に聞く

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インターネット通信事業者の草分けであるインターネットイニシアティブ(IIJ)を創業した鈴木幸一会長は大のクラシック音楽ファン。ポケットマネーで「東京・春・音楽祭」を立ち上げ、その実行委員長を務めている。10年目の今年は3月15日から4月14日まで東京・上野でオペラを中心に100以上の公演を用意した。毎年のように数億円単位の私財を投入してまで続けている理由はどこにあるのだろうか。
あわせて、鈴木会長、勝栄二郎社長体制に移行してからIIJの経営課題はどう変わったのか、会長になって半年後の本音を聞いた。

苦しい時期に始めた

――指揮者の小澤征爾さんとの親交からユニークな音楽祭が始まりました。

小澤さんがウィーン国立劇場の音楽監督に決まるようなタイミングだった。友人たちと酒の席で「日本で作ったオペラを欧州でやれば面白い」なんていうことを冗談で話していたのがきっかけ。東京で小澤さんにオペラをやってもらおう、ということで始めた。

でも最初は苦しかった。2005年3月、第1回目の公演は東京文化会館の2400席中400席しか埋まらなかった。これほどまでにお客さんが来ないのかと驚いた。2年目は、小澤さんが病気で代役が振ったが4800万円のチケット代払い戻しを経験している。そもそも、音楽祭の準備を進めている時期に、クロスウェイブ(コミュニケーションズ、ソニーやトヨタと設立したデータ通信の専門会社)が破綻するなど個人的にも苦しい時期に始めている。でも約束はしっかり守ろうということで始めた。意固地になる性格なんでね。

――音楽祭を上野で開催している理由は?

高校時代から、いつも学校をさぼって上野の博物館や美術館に通っていた。世界的にもこれだけ文化施設が集まっているのは珍しいし、愛してやまない場所だ。どの施設でもコンサートを楽しめるようにすることで、東京に住む人や働く人がみんなで楽しめる音楽祭をやりたかった。裾野を広げるため、料金を安く設定し、半分以上の公演を無料にしている。地域の小学校でも演奏する。子供たちも「初めてバイオリンの音を聴いた!」なんて喜んでくれる。若い演奏家を育てるための、いい場になってきたと 感じている。

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