上野の音楽祭が10年目、散財を厭わないワケ インターネットイニシアティブの鈴木幸一会長に聞く

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――社内の環境が変わってしまったということですか。

そういうことだ。もっと仕事に没頭できる環境に変えていきたい。最近では早く帰る社員も多いが、若い社員は、多少無理してでも自分のために仕事に没頭してほしい。そうしなければ、仕事における技術や感覚が身につかないからだ。インターネットの世界では、普通にやっているだけではアメリカに負ける。シリコンバレーで働く人々は体力もすごいが、サービスに対する思い込みも非常に強い。IIJも、つねに新しいことを始めて叩かれてきた苦難の歴史がある。そういうことを繰り返すことで、よいサービスを生み出せると思っている。

ただ、若手の良いところは、楽々と新しいサービスを作ってしまうところだろう。個人向けのモバイルサービス「IIJ mio」など、私の年代は苦手な分野だけど、若手は作り方がうまい。こうしたところは伸ばしていきたいと思っている。

――「NTTドコモを超えるような成長をする」というのが目標。そのために必要なイノベーションとは。

インターネットは今、技術的な転換期を迎えており、その中で主導権を取れると考えている。たとえば、ルーターがなくて、サーバーだけでシステムを回したっていい。ドコモの技術では回せないが、IIJならできる。2~3年後、システムの運用はまったく違う形になるのではないか。技術が変化すればコストは大きく下がるので、そこで新しいサービスが生まれていくだろう。

自治体クラウドなども積極的にやっていきたい。現在、各自治体の住民データはたこつぼ状態だが、みんな共有してしまえばいい。県や地域で共有すれば情報の照合がすぐにできる。小さな市町村はシステムを持たないようにし、全国で同じシステムを採用すれば、かなりのコストカットになるだろう。

たとえば、お隣同士である横浜市と川崎市で違うシステムを採用しているとする。いったいどこに違うシステムを使う意味があるのか。ムダなことにおカネをかけるのではなく、必要な場所に労働力を提供していくべきだろう。インターネット技術によって、これまでとは異なるマーケットや新しい産業を作るチャンスがあると思っている。

本社を飯田橋付近へ移転

――本社を、現在の神保町の三井ビルディングから飯田橋付近に移転する予定です。

三井ビルディングに入居されている旭化成さんには拡張したいというニーズがあり、私たちも安くて良い場所に行きたいと思っていた。移転先も同じ三井不動産のビルを借りる。川を渡れば新宿区、かろうじて千代田区というような場所だが、分散していた拠点をまとめることができる。

このインタビュー記事は、週刊東洋経済2月22日号(17日発売)掲載の「この人に聞く」に加筆したものです。

(撮影:風間仁一郎)

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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