東大出身者がピアノ愛好家の頂点に立つ理由 大人を燃えさせる「アマチュアピアノ」の世界

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確かに“教養としての音楽”という言葉はとても魅力的だ。これこそがアマチュアピアニストに最も相応しい言葉のように感じられる。さて、竹本さんたちアマチュアピアニストは、日々どのような活動をしているのだろう。

「アマチュアピアニスト界にはSNSを活用したサークルが数多く存在します。私の場合は、《アマコンに出よう》《アマチュアのためのショパン・エチュード研究会》という2つのサークルに参加していて、Facebookのグループ機能や、mixiのコミュ機能で練習会の募集を行っています。音響の良いホールのすばらしいピアノを使って練習することは私たちのあこがれです。これはその費用を分散するための方策です。特に公共ホールは使用料が安いうえに地区優先がありますので、借りたいホールの地区住民を勧誘することは必須です(笑)

一度ホールで弾いてしまうと、癖になって後戻りできないから困ったものです。個人的にはレンタルスタジオもよく使いますね。1時間1200円から2000円くらいでグランドピアノ付きのスペースが借りられるので便利です。最近は楽器を演奏する人が増えているので、ピアノ付きのカラオケボックスもあるようです」

“聴く派”と“弾く派”の大きな違い

いやはやすごい。“聴く”を重視したピアノファンとはまったく別の、“弾く”に重きを置いたピアノファンの世界がこれほどまでに広がっているとは驚きだ。“聴く派”がコンサートやCDなどの音源に興味を持つように、彼ら“弾く派”は楽譜や楽器にことさら強い興味を持つのだという。もちろんピアノというキーワードの下、興味の対象が重なる部分もたくさんあるのだろうけれど、その違いは想像以上に大きそうだ。

プロとアマチュアの違いについて改めて考えてみると「人に受け入れられることを重視してピアノを弾いているのがプロで、自分の喜びのために弾いているのがアマチュアです。アマチュアピアニストの位置付けは“愛好家”ということですね」と語った竹本氏の言葉が心に残る。その竹本氏、所沢市民文化センターで開催される《ミューズオルガンスクール》にも通いたいのだという。こちらは、大ホールに備え付けられたオーストリア・リーガー社製の豪華なパイプ・オルガンを使った発表会に参加できるから、というのがその理由。確かに大ホールのオルガンを演奏している自分の姿を想像すると、参加したくなる気持ちも理解できる。何とも素敵な“愛好家人生”だ。

一般家庭には今も数多くのピアノが眠っていることだろう。これはまさに高度成長期の文化遺産。“ピアノ売ってちょうだい”なるCMが頻繁に流れることにも納得だ。その昔ピアノを習っていたあなた。もしご自宅に使っていないピアノがあるならば、久しぶりにピアノのふたを開いて鍵盤に触れてみてはいかがだろう。もしかしたら、そこから素敵な“愛好家人生”の幕が開くのかもしれない。

田中 泰 日本クラシックソムリエ協会 代表理事

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たなか やすし / Yasushi Tanaka

一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事、スプートニク代表取締役プロデューサー。1957年生まれ。1988年ぴあ入社以来、一貫してクラシックジャンルを担当。2008年スプートニクを設立して独立。J-WAVE「モーニングクラシック」「JAL機内クラシックチャンネル」等の構成を通じてクラシックの普及に努める毎日を送っている。

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