「記憶力日本一の男」流、忘れない力の鍛錬法 脳が「覚えやすい形」に情報を加工してみよう
池田:記憶は「覚える力」と「思い出す力」で構成されています。入ってきたものを思い出す時って、けっこう体力・気力がいるんです。多くの人は、特に歳を取ると「あっ、もう面倒くさい」ってなっちゃう。その気力だけの話だと思うんですよね。
鬼頭:なるほど……。確かに思い当たる節があります。気力以外にも、具体的に何かを覚えるときのコツはあるのでしょうか?
池田:記憶術というのは、脳が覚えやすい形に情報を加工する作業。簡単に言うと、文字や数字の状態だと覚えづらいものを、イメージや絵に変えることなのです。どんな情報でも、一旦は記憶しても、きっかけがないとなかなか思い出せません。でも、それを「思い出」にすると記憶にずっと残って、しかも思い出せるようになるのです。
思い出って、くだらないことでもずっと覚えているじゃないですか。これを記憶術では「エピソード記憶」と言います。人間の脳は感情が紐づいた情報を優先して覚えるようになっているので、体験したときの感情が一緒にフックになっているものは思い出しやすいんです。
わかりやすい例に、「ベイカーベイカーパラドクス」という心理現象がああります。昔、集めた人たちをA群B群に分けて、同じ男性の顔写真を見せてそれぞれ違う条件で覚えさせるという実験がありました。A群の人たちには「この人の名前はベイカーです」と言い、B群の人たちには「この人の職業はベイカー(パン屋)です」と言う。それを記憶してもらうのです。
それで、しばらくしてから覚えているかどうかを質問すると、A群ではうまく思い出せない人が多発するのに対し、B群の人たちはたいてい思い出せるんです。これは結局、B群の人たちが「パン屋」という言葉から、酵母の匂いとか、コックさん風の仕事着とか、そういう風景を想像していたからです。
支離滅裂でも、自分で作った語呂合わせは強い武器
鬼頭:情報を加工すると言えば、たとえば僕は大学受験や司法試験のとき、語呂合わせを使っていました。僕の経験則だと、人が作った語呂合わせよりも自分が作った語呂合わせのほうが、支離滅裂なんだけどよく覚えられるんですよ。それも何か、記憶術と関係あるんでしょうか。
池田:関係ありますね。覚えづらい情報を自分で加工して、自分で新しい形を作ったことによって、それが経験になります。だから立派な「エピソード記憶」。これは語呂合わせに限らず、絵に変えたりお話に変えたりすることも有効です。
鬼頭:「経験に変える」作業が必要なんですね。インプットではなく、アウトプットにも何か便利な方法はあるのですか?
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