一方、平成25年3月期 第3四半期(4~12月期)の損益計算書を見ますと、一般企業の売上高に相当する「営業収益」は9420億円です。破綻前は、同四半期間で1兆5593億円あったことを考えますと、売上げを減らしても不採算路線をどんどん削減し、資産も圧縮したということです。その結果、資産回転率(営業収益÷売上高)ではさほど大きな違いはありませんが、収益的には大きな改善をしています。なおかつ負債が激減していますから、財務的にも非常に身軽な会社になったというわけです。
そして、JALの名誉会長となった稲盛和夫氏の指揮の下、全従業員の考え方が統一され、サービスも向上させるという、良い循環に入っています。
ただ、この状況が今後も続くかどうかは分かりません。というのは、2011年の世界の航空会社の84%が加盟している国際航空運送協会(IATA)全体での純利益が84億ドル(※1ドル=80円換算で約6720億円)であるうち、JALの純利益は1866億円でした。つまり、JAL1社だけで世界の航空会社の純利益の30%近くを占めていたことになります。これは、競争環境上通常はあり得ない話です。
もちろん、JALの経営努力もあるでしょう。不採算路線からの撤退や、従業員のリストラ、年金や退職金負担の大幅な削減、金融機関による債権放棄、そして法人税優遇措置など、あらゆる要素が劇的な回復に繋がったのだと思います。しかし、それらを考慮しても、この状況はあまりにも特殊ですから、このままの状況が長く続くとは考えにくいのです。JALは破綻したことによって、業績が大きく好転したことは間違いありませんが、LCCの台頭などにより競争環境が引き続き厳しいことや、円安もあって燃料価格が高止まりしていることを考えれば、今後の業績には注意が必要です。(以下、(下)に続く。下は27日(水)掲載の予定です。
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