日本の観光・航空産業は成長余地に恵まれている--IATA事務総長兼CEO トニー・タイラー
中国の反日デモや欧州危機の影響が懸念される日本の航空産業だが、首都圏空港のハブ戦略や外国人の訪日観光拡大を通じた成長戦略は海外からの注目も大きい。その効果や課題、さらには世界最高の利益水準まで急回復した日本航空の行方について、来日中のIATA(国際航空運送協会)のトニー・タイラー事務総長兼CEOに聞いた。
──欧州債務危機などの情勢は、グローバルな需要にどんな影響を与えていますか。
世界の航空産業は今年、30億ドルの税引き後利益総額(2011年は79億ドル)と予測され、売上高に対する率としてはわずか0・5%と脆弱な状況にある。この産業は世界の経済成長率が2%を切ると損失が出る構造だが、今年の世界の成長率予測はちょうど2%だ。
欧州危機は欧州のエアラインを中心に悪影響が出ている。航空産業はほかにも自然災害やテロなどのイベントリスクがあるが、現在のところ最も影響が大きいのは世界の経済成長の低さだ。これに燃料価格の上昇が追い打ちをかけている。
──大手エアラインはどのような対応策を打っていますか。
空港関連の権利を国が持っている関係で、各国のエアラインは簡単に経営統合しにくいのが現状だ。それを乗り越えるために生み出されたのが大手エアライン同士のアライアンスと、その発展形であるジョイントベンチャー(共同事業)だ。
共同事業では、日本-北米間の路線で日本航空(JAL)とアメリカン航空、全日本空輸(ANA)とユナイテッド航空が実施している。最近発表されたものでは、オーストラリアと欧州をつなぐ路線で、カンタス(豪州)とエミレーツ航空(UAE)という組み合わせもある。アライアンスや共同事業の目的は、エアラインの経営資源を統合して競争激化を軽減し、顧客に対しては改善されたサービスを提供することにある。