JAL“予想外”の成功で注目、稲盛氏の右腕 森田JAL特別顧問が明かすアメーバ経営の実際
“予想外の”日本航空(JAL)再建成功で注目を集めるアメーバ経営。アメーバ経営は、稲盛和夫・京セラ名誉会長が編み出した小集団採算管理を特長とする経営管理手法だ。森田直行氏は、京セラ創生期に入社し、稲盛氏からアメーバ経営の直伝された人物。森田氏は「アメーバ経営」コンサルティング事業を指揮するとともに、2010年にはJAL再建に当たる稲盛氏を傍らで支えた。その森田氏にJAL再建を成し遂げたアメーバ経営の実際を聞いた。
--日本航空の再建は大方の予想以上に順調に進んだ。アメーバ経営をどのように適用していったのか。特殊な状況でもあり課題は多かったと思うが。
正直に言って、再建がこれほど順調に進むとは思っていなかった。JALの従業員や経営幹部が一生懸命努力したからだ。やはりJALの人材は優秀だったからこそ、アメーバ経営の効果も発揮されたのだと思う。みな優秀だったにもかかわらず破綻したのは、経営の舵取りがわずかにずれていたために、その能力を活かせなかったのではないか。
10年2月にJALに初めて入ったときの雰囲気は、まるで会社が潰れていないような雰囲気だった。特別な法的処理によって航空機の運航が止まらないようにしていたため「会社が破綻した」と感じにくかったのだろう。幹部も“何とかしてもらえるだろう”と思っているようだった。
森田直行氏
数字を見る人間がいなかった
びっくりしたのは「利益」の感覚が希薄なことだった。「JALは絶対に潰れない」という意識があって「利益よりも安全が絶対」「公共交通として地域の要望があれば赤字路線でも飛ばすべき」という考えだった。
これは確かに美しい考えだが、利益があってこその安全運航であり、路線の維持だ。そのことが理解されていなかった。
まず取り組んだのは意識改革。本社から現場、関連会社まで、稲盛名誉会長に随行してヒアリングして回った。稲盛名誉会長は羽田や成田へもしばしば行ってパイロットやキャビンアテンダントなどともよく話をされた。そうした中で売り上げを伸ばして費用を抑えることの重要性から、サービス第一の精神、顧客に対して心からあいさつすべきことなどなど、細かなことまで説いていかれた。同時にわれわれも航空事業を学んだ。