「月給制で働く人」が見落とす最低賃金の基本 あなたは「本当の時給」を把握していますか

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最後に、月給者の最低賃金の計算にあたっては、計算の基礎に含めない手当があることが気付かれずに最低賃金違反が行われてしまっている場合があることにも触れておきたい。

計算の基礎に含めない手当に注意

これも、インターネット上で見かけたある病院の求人だ。

■医療事務
給与 本給:13万4000円~25万円
調整手当:1万1000円
皆勤手当:1万円
【勤務時間】 8:30~17:00
【休暇/休日】 年105日(その他、夏期休暇3日)

 

本給の最低水準である13万4000円の場合で試算してみよう。

(13万4000円+1万1000円+1万円)÷(365-108日÷12カ月)×7.5時間=964.98円

となり、最低賃金を上回っているように見える。

ところが、最低賃金の計算ルール上、皆勤手当は計算の基礎に含めてはならない。したがって、皆勤手当を抜いて再度試算をしてみると、

(13万4000円+1万1000円)÷(365-108日÷12カ月)×7.5時間=902.72円

となり、現在の東京都の最低賃金である時給907円を下回っていることになる。

このように、月給者が最低賃金をクリアしているかを計算する際には、皆勤手当のほかにも、通勤手当、家族手当など、最低賃金の基礎に含めてはならない手当がいくつかあるので、それらの手当を除いたうえで最低賃金をクリアできているかの確認が必要である。

最低賃金は、時給で働く人の場合は、違反があれば一目瞭然なのだが、月給者の場合は計算してみなければわからないので、意図せずとも放置されてしまうことがある。月給制で働いている人の中には、知らずに自分の給与が最低賃金を下回っているケースがあるかもしれない。全国的に最低賃金が引き上げられることが決まった今、労働者自身だけでなく企業経営者や人事担当者も見落としがないか、改めて考えたいテーマといえる。

榊 裕葵 社会保険労務士、CFP

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さかき ゆうき / Yuki Sakaki

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。会社員時代の経験も生かしながら、経営分析に強い社労士として顧問先の支援や執筆活動に従事している。

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