がんを狙い撃ち!陽子線治療の精緻な仕掛け 先端医療を支えているのはテクノロジーだ

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そのためにできることは2つある。

まず、陽子線の密度を高めて1回あたりの照射の効率を高め、通算での治療回数を減らすこと。

「すでに名古屋陽子線治療センターでは、前立腺がんの治療に必要な照射の回数が40回から20回にまで減っています」

それから、照射室の中で準備に使う時間を短縮するのも大事な工夫。照射時間の15分間以外の、ベッドに乗ったり降りたりという時間を短くできれば、効率が上がる。

「ある程度の準備を照射室の外で行えるようになれば、同じ時間で照射できる患者さんの数を2、3割増やすことができます」

北米の最新施設の照射室(写真提供:日立製作所)

これはかなり画期的だ。というのも、ある医療施設にある陽子線治療システムは朝6時から夜10時まで治療にフル稼働していて、もう、稼働時間を延ばすことはほとんどできないからだ。

24時間すべてを治療に使えないのは、メンテナンスが必要だから。これも日立の大事な仕事だ。陽子線の照射はプラスマイナス0.5ミリという精度で調整しなくてならない。医師には「水道の蛇口をひねれば水が出る。それと同じ感覚でいつも使ってもらうようにするのが、メーカーの役目です」と中村さんはいう。

「もちろん、だからといって誰でもこのシステムを使えるというわけではありません。治療計画を立てるには、腫瘍と放射線の専門知識が必要ですから」

医師も知識のアップデートが必要だ

それに加えて医師には、自分の知識をアップデートし、最先端の治療システムを使って治療をしよう、治してやろうという意気込みのようなものも必要なのではないか。

「そうですね。専門知識の他に、患者さんのためという気持ちと、最先端のものに取り組もうという気持ちが必要だと思います」

前職のマイクロソフトでは日立製作所の日立工場をはじめとして、横浜工場、習志野工場、神奈川工場などに行ったことがある。そのすべての現場で親睦を深めたのだが、毎回きっちりと記憶がなくなるまで飲んだ。やはり歴史のある重電を母体とする会社なのだ。鉄鋼や鉄道などの会社も昔は多いに飲んで親睦を深めたものだ。あの頃の宴会は長期間の互いの信頼を深めるための仕掛けだったのかもしれない。その記憶が蘇ったとき、医療技術こそ信頼できる会社に任せたいと思った。

(構成:片瀬京子)

成毛 眞 元日本マイクロソフト社長、HONZ代表

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なるけ まこと / Makoto Naruke

1955年北海道生まれ。元日本マイクロソフト代表取締役社長。1986年マイクロソフト株式会社入社。1991年、同社代表取締役社長に就任。2000年に退社後、投資コンサルティング会社「インスパイア」を設立。現在は、書評サイトHONZ代表も務める。『amazon 世界最先端の戦略がわかる』(ダイヤモンド社)、『アフターコロナの生存戦略 不安定な情勢でも自由に遊び存分に稼ぐための新コンセプト』(KADOKAWA)、『バズる書き方 書く力が、人もお金も引き寄せる』(SB新書)など著書多数。

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