高校野球は甲子園球場を「無料」で使っている 放映権収入もナシ、驚きの「ビジネスモデル」
それなら、これだけの人気を誇る高校野球なのだから、いっそのことプロ野球公式戦なみの料金設定にすればどうかという考えがあるかもしれない。ちなみに阪神タイガースの公式戦のチケット代は、バックネット裏8000円程度(シーズンチケットのため1試合平均の料金)、内野席4500円、アルプス席2500円、外野席1900円(平日、一般、大人の料金)となっている。
実際、高野連があれだけの大会を15日間も運営するためには、大勢のスタッフが必要になるだろうし、阪神電鉄が所有する甲子園球場の使用料も相当な額になる、と多くの人は思うはずだ。
球場使用料・放映権料なし、理事も無給
ところが、現実はこれとまったく異なる。甲子園大会の運営に直接かかわる高野連理事は無給だし、大会期間中に選手たちを陰でサポートするスタッフは高野連OBが務めていて、こちらもボランティアだ。さらに、本連載の第1回で述べたように、審判委員にも報酬は支払われていない。
さらに驚くべきなのは、高野連が甲子園球場の使用料を払っていないことだ。もちろん、グラウンド整備などに要する費用は負担しているものの、15日間にわたる大会で最もカネがかかると思われる球場使用料が無料なのである。
また、これだけ人気のコンテンツなのだから、高野連には全試合放送するNHKや大阪朝日放送などから多額の放映権料が入ってくるように思われるが、こちらも無料だ。このように徹底した非商業性を貫いているのが高校野球なのである。
もっとも、甲子園球場の使用料が無料であるのには、ちゃんとしたワケがある。現在の甲子園大会の前身である“全国中等学校優勝野球大会”がスタートした1915年には、まだ大勢の観客を集められる本格的な野球場は日本に存在していなかった。
そして、この野球大会が人気を集めるのを受け、阪神電鉄が兵庫県から払い下げを受けた広大な土地に野球場を含むレジャー施設の建設計画を立て、現在の甲子園球場は誕生したのである。要するに、鉄道会社が高校野球人気の高まりによる鉄道利用増を当て込んでできた球場なのだ。
2020年までに名目GDP600兆円という政策目標を掲げる安倍政権は、スポーツを“成長産業”のひとつとみなし、高校野球や大学野球にも商業化の推進を働きかけている。本年5月28日に鈴木大地スポーツ庁長官が東京六大学野球リーグ戦の“早慶戦”を視察したのもその一環だろう。
日本版NCAA(全米大学体育協会)のような組織を作り、学生スポーツを一本化することでガバナンスを利かせ、メディアからの放映権料や観客からの入場料収入をガッツリ徴収してそれをさらなる強化費用に充てるという“ビジネスモデル”を考えているように思える。
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