財政政策は「成長押し上げ」を最優先すべきだ 事業規模よりもメニューと支出金額が重要

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経済対策にはリニア中央新幹線の前倒し延伸なども含まれそうだ(撮影:尾形文繁)

前回の本欄(7月18日)で、アベノミクスのギアチェンジとしての財政政策拡大への市場の期待が高まっていると述べた。その直後の7月21日、補正予算等による追加財政政策が20兆円規模に拡大するとの複数の一般紙の報道に為替市場が反応して円安が進み、株式市場が一段高となる場面があった。金融市場は財政政策転換を通じた成長押し上げを期待している。 

もっとも、上述のメディアで報じられた経済対策では、成長率押し上げに直結する真水ベースで3兆円規模にすぎない。事業規模が膨らんでも、それが融資支援の枠などであれば、そのごく一部しか成長押し上げにならないし、リニアなど10年以上先の分の支出を含めて事業規模が膨らんでも、それは1、2年後のGDP成長押し上げに直結しない。これらの報道は政府の正式発表ではないし、素案を作成した霞が関あたりが情報源と推察される。

官邸と霞が関の間で神経戦か

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その後、前述の規模の素案に対して、官邸はさらなる積み増しを考えていると報じられた。実際に真水3兆円規模ならこれまでの補正予算などとほぼ変わらない。報じられているメニューは小粒で、経済成長押し上げ策には圧倒的に力不足であると筆者は考えている。

その後7月26日に、追加財政政策による真水が6兆円に膨らむと再び報じられた。真水を拡大させる官邸の意向に応じた改訂案とみられるが、真水のうち4兆円は2017年度の予算に計上され、2016年度の補正予算規模は2兆円に留まるとの中身となっている。

この報道の信憑性も定かではないが、この改定案においては、そもそも補正予算の規模が2兆円と前回の素案よりも縮小している。また、4兆円の真水が2017年度の予算でどのような取り扱いになるかはまったくわからない。4兆円の追加対策の分2017年度の当初予算が減る可能性もあり、6兆円の真水がGDP成長率を押し上げにつながるか不明である。

その後27日、安倍首相は事業規模が28兆円に達すると言及した。一連の報道を踏まえると、官邸と霞が関の間での追加財政政策を巡る神経戦が続いているとみられる。ただ、現時点の報道を踏まえると、筆者がベストと考える家計所得拡大に直結するメニュー拡充によって、5兆円規模の成長押し上げ策が実現する可能性は高くない。これでは、財政政策転換によるアベノミクスのギアチェンジとは言いがたいだろう。

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