参議院選挙が終わり、早速次の経済再生策を打ち出し始めた安倍首相。報道によると「融資などを含め事業規模10兆円を超える大型対策で自らの経済政策『アベノミクス』を進める」とあります。昨日の市場情報では20兆円という話まで飛び出してきております。相変わらず、自民党政権は経済政策と言えば金をバラまくことしか頭にないと言われても仕方ありませんね。良いタイミングなので、安倍政権のこれまでの政策を採点してみましょう。
まずこれは何度も書いてきたことですが、金融緩和は景気対策にはなりません。この政策は金融危機などに際し流動性を供給するのが主な目的であって、だからこそアメリカは「未曾有」の金融緩和に踏み切ったわけです。結果として日本だけが金利の高いままだとどんどん円高になる恐れがあるので、追随して金融緩和をしていくのが「道理」であります。過去20年以上に渡る金融緩和の継続が、経済成長に何事も引き起こさなかったことはデータを見れば明らかで、すでに証明されてしまっているのです(たとえば日本のGDPはこれだけ金融緩和を継続しているにもかかわらず約500兆円でずっと横ばい)。
なぜ個人消費をダイレクトに刺激しないのか
さらにいつも申し上げているように、円安誘導により輸出産業から経済成長を喚起するという考え方も怪しい。なぜなら輸出依存度が15%にしか過ぎない日本では、あまりにもその効果が限定的だというのは小学校の算数の知識があればわかること。そこで、輸出企業を中心に大企業が儲かれば、滴がしたたり落ちるが如きその利益がトリクルダウンする、と苦し紛れの主張をしたわけですが、最近ではさすがに首相も言わなくなりました。
それに比べるとこの10兆円規模(20兆円)の大型対策は筋としてはいい。「実弾」をぶち込むわけですから、金融緩和、円安誘導に比べればはるかに威力があるはずです。しかしですよ。その意味ではなぜGDPの構成項目としてダントツ1位の60%以上を占める個人消費をダイレクトに刺激しようとしないのか。周辺事項をちょろちょろやったところでどうしようもない。
同じ財源が必要な事業ということでみれば、消費税減税がいちばん手っ取り早い効果がある景気対策ということは一目瞭然です。さまざまな事業投資は儲かる業界が明確になるので、おカネを出すことで業界に対する監視が効き、物事を有利に運べるという政治家としての「スケベ心」が出てくるのはわかりますが、ここはまず個人消費を刺激することが必要なのではないでしょうか。
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