このままだと日銀会合後、日本株は急落する 今後の日本株に最も厄介なシナリオとは?

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(3) もっと広義の、漠然とした意味合いでの、「ヘリマネ」。つまり、今回の日銀金融政策がどう変わるとか、経済対策がどうなるといったこと関係なく、市場での購入とはいえ日銀がほぼ全額、政府の債務を購入しているわけで、既に実質的な「ヘリマネ」状態にあるということだ。

(3)の場合は、厄介だ。既に市場から「ヘリマネ」認定されているということであれば、このマーケットを止めるのは難しいということだからだ。

発表後のメインシナリオは「円高、株価急落」だが・・

今週は、遂に日銀政策決定会合の結果が29日(金)に発表される。市場の予想は(1)マイナス金利の深掘り、-0.3%程度へ、(2)量的緩和政策の拡大、現状の年80兆円を100兆円へ、(3)ETFの増額、現状の3兆円程度から5兆〜7兆円ぐらいへの拡充と言うところだろうか。そして、政府の経済対策もその翌週、8月2日に発表される。それと合わせての判断となる。

現在、事業規模が20兆円だとか30兆円だとか、どんどん膨らんでいる。しかし、事業規模がいくら膨らんでも意味は無い。財政投融資等で融資すると言っても、事業を引き受ける先がないと、絵に描いた餅だ。肝心なのは「真水」がどれだけあるかということだ。

現在報道されているところでは、3兆円規模と言われているが、これでは、全く少ない。2013年1月、アベノミクス始動時に2本目の矢として出された経済対策は、「真水」13.1兆円だった。3年前に13兆円出しているのに、今回は僅か3兆円となると、市場はしらけてしまう。

想定されているシナリオから言うと、今回の日銀政策決定会合、政府の経済対策を合わせても市場の期待からは程遠く、ドル円も、株価も急落することが予想される。おそらく、それがメインのシナリオとなってくるだろう。

厄介なのは、予想通り大したことのない対策でも円高にならない場合だ。それは上記の(3)のケースと言えるが、もう既に実質的ヘリマネと市場に認定されたということになる。その場合、我々は既に長期円安トレンドのスタート地点に立っていることになり、難しいマーケットが予想される。

志摩 力男 為替トレーダー

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しま りきお

慶應義塾大学経済学部卒。ゴールドマンサックス、ドイツ証券等でプロップトレーダーを歴任。その後、香港にてヘッジファンドマネージャー。独立した後も世界各地のヘッジファンドや外銀トレーダーと交流があり、現在も現役トレーダーとして活躍。なお、株式会社GOGOJUNGLE では、Fintech eCommerce 総合サイト「fx-on」を運営。志摩氏のほか武者陵司氏など総勢30名を超える著名アナリストが集結。志摩氏の「実戦リアルトレード」など、国内最大規模を誇る投資Salonを展開しつつ、システム・トレーダー向けエキスパート・アドバーザーなどの販売も手掛ける。

 

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