しかし、その後活躍している人は、誰ひとりとして私は知りません。
なぜか? それはそういったケースの多くの場合、その留学や留年に明確な目的やポリシーがないからです。留年などをすることのインセンティブ(動機づけ)は多くのケースでは単なる「現実逃避」です。そしてその背景にあるのは思考力や行動力、決断力の欠如です。
「自分がやりたいことを探すために留学する」。そううそぶいて海外へ行った人もいましたが、大学の4年間にやりたいことが見つからなかったのに、海外で見つかるはずもありません。
「時間」や「環境」は問題ではない
なぜならば、根本の問題は自分でやりたいことを判断する決断力の欠如であり、時間が足りないことでも置かれた環境が悪いわけでもないからです。目的やポリシーのない逃げは単なる時間稼ぎやその場しのぎであり、そこにリターンはありません。
反対に、現時点で勉強したいことややりたいこと、つまり目的やポリシーが具体的にあり、その実現のために時間が解決につながるという話であれば留年も考えられなくはないでしょう。
しかし、今回の小林さんのケースのように、「現時点ではわからない何かをするために留年」という選択肢は目的やポリシーのない現実逃避です。1年なんてあっというまに過ぎてしまいます。その一方で、短いながらも1年間社会人として過ごしてきた人と目的もなく現実逃避していた人の差は広がるばかりです。
大切なのはバランスです。1年留年するなら、そのマイナスを埋め合わせて余るほどのプラスが求められます。現時点でやることが決まっていない中、それは現実的と言えますか? もっと言うと、今留年すると、同年卒業の人よりも3年余計に人生を過ごしてきたことになります。小林さんは1年留年することで、周りよりも3年分のアドバンテージを持てると現実的に思えますか?
小林さんは2年浪人されていますから、同年卒業の学生よりも2年分の「何か」が本来はあってしかるべきなのです。もちろんここで言う「何か」は直接的に仕事につながらずともよいわけで、人生観であったり、思いやり、深い思考力や分析力でもよいのです。
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