日経平均が上昇した真相とその賞味期限 海外投資家が今度こそと期待する景気対策
1つは、税収だけで経済対策をまかなう場合に比べ、国債増発分だけ、対策の規模が大型化するとの期待が生じたこと。もう1つは、ヘリコプターマネーの「ようなもの」になるという解釈が、特に海外投資家の間に広がったことだ。いわゆるヘリコプターマネーの厳密な定義は、政府が発行する国債を日銀が直接引き受け、しかもその国債は永久国債(あるいは国債の償還が来るたびに、日銀が機械的に新しい国債に乗り換える)など、政府が償還を気にしなくてよい形にすることだ。この意味での実施はありえないだろう。
「ヘリコプターマネーのようなもの」への期待
7月21日の日本時間夕に、英BBCラジオが黒田総裁のインタビューを放送し、そのなかで総裁がヘリコプターマネーについて、必要も可能性もない、と述べたため、一時為替相場が円高に振れた。しかし、上記で述べたような定義によるヘリコプターマネーの実施は、もともとありそうもないのだから、黒田総裁の発言は当然のことだ(余談だが、BBCの広報担当者によれば、総裁のインタビューは、だいぶ前の6月17日に収録されたものだそうだ)。また、7月13日に菅官房長官がヘリコプターマネーを政府が検討している事実はない、と述べているのだから、黒田総裁のインタビューは、ますますサプライズではない。
そうしたサプライズでもないことをサプライズのように騒ぐ市場の体たらくは横に置いて、海外投資家が期待しているのは、ヘリコプターマネーそのものではなく、前述したような、ヘリコプターマネーの「ようなもの」(米国投資家は、like-helicopter-money と言っている)だ。すなわち、政府が建設国債を増発する意向で、それと協働しているのか勝手に独自に動いているのかはさておき、日銀が国債買い入れを増額すれば、それは結局ヘリコプターマネーのようなものだろう、という考え方だ。
この「ようなもの」の考え方に沿って、なぜ海外投資家が円安・日本株高が進むと見込んでいるのかを述べよう。
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