日経平均が上昇した真相とその賞味期限 海外投資家が今度こそと期待する景気対策

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これまでの量的緩和は、政府が財政赤字穴埋めのための赤字国債を予定通りの額だけ発行し、最初は銀行などが保有したものを日銀が銀行から買い取る、という形だ。つまり、国債の保有者が民間銀行から日銀に移転するだけだ。当初は、民間銀行にとって、国債が現金に化けることになるため、その現金を、国債ではなく融資や外貨建て資産・株式への投資に振り向けることで、景気や株価を支え、円安になるという期待があった。しかし実際には、銀行は景気低迷で融資が伸びず、株式や外貨建て資産への投資リスクを冒すこともできず、消去法的に、再度国債へおカネが流れることとなっている。

これに対し、意図しているのか否かは別として、建設国債の増発と日銀の国債買い入れのセットになれば、最終的には日銀から政府に資金が流れ、政府はそのカネを経済対策に確実に使う(建設国債の資金使途の縛りによる)ため、資金は経済全体に散布されると見込まれる(ただし今回の建設国債の発行額は1兆円程度と見込まれており、規模は限定的だ)。とすれば、今度こそ経済全体にとって、これまでよりはカネ余り効果が生じ、その資金の一部が外貨建て資産に向かうかもしれない、という期待が生じているわけだ。

8月半ばまでなら1万8000円超えも

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ここで、今週からその先の国内株式市況を展望しよう。日銀金融政策決定会合(28日~29日)では、展望レポートで日銀自身が物価見通しを下方修正すると見込まれることもあって、国債等の買い入れ増は打ち出されると予想している。またその先には、8月上旬とみられる経済対策の具体化が控えている。とすれば、今週から8月半ば辺りにかけては、日経平均株価は上伸し、1万8000円を超えてくることもありうると見込む。そのなかで今週の日経平均株価は、1万6500円~1万7300円を予想する。ただし8月半ば以降は、残念ながら株価は下落基調に転じると考えている。これは次回の本欄で述べることとしたい。

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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