次の日銀総裁は誰か? 日銀・白川総裁が異例の辞任表明

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単純に、副総裁の任期満了に自身の引き際も合わせた、と解釈すればそれまでだが、政権交代で日銀の境遇が大きく変わったことも影響しているだろう。

デフレ脱却を大目標に掲げる安倍晋三首相は、「大胆な金融緩和をやってください」と日銀に対するプレッシャーを強めている。実際、内閣発足から1カ月足らずの1月22日には、日銀と政府の政策連携を目的とした共同声明を発表している。

一方、白川総裁は「22日に思い切った金融緩和の推進を決定し、この内容を国内外で私の言葉でしっかりと説明する必要があると思っていた」と、辞任を決める節目であったことを示唆。国内で会見や講演をし、今回のBIS会合で、各国中央銀行の総裁に政策の説明を行ったうえで、「私自身の進退について話をする環境が整ったと判断し、今日、総理に申し上げた」(白川総裁)。

日銀に対する金融緩和のプレッシャーの高まりから、会見では「政府からの辞任の圧力があったのか?」「金融緩和の圧力に対する抗議の辞任か?」といった質問も出たが、白川総裁は「まったくそういうことはない。あくまで新しい体制が同時にスタートできることを目的としたもの」と繰り返した。

そもそも、総裁と副総裁で任期満了の時期が異なる点こそ、白川総裁の境遇を象徴している。前任の総裁と副総裁の2人は、08年3月19日と同じ日に任期満了を迎えていた。だが、その時点において2人の新副総裁は決まっていたものの、次期総裁については国会で同意が得られず「空席」のままだった。

このとき、3月19日に退任会見を行った福井俊彦総裁は「任期満了の時点で後任の総裁が任命されていないということは、歴史的にも極めて異例で、残念なこと」と話していた。現実の総裁空席という緊急事態に対し、日銀では副総裁が総裁職を「代行」するという苦肉の策をとる。その代行を務めたのが、08年3月20日付けで副総裁に任命されたばかりの白川氏だった。

結局、白川氏は総裁代行を3週間弱務め、08年4月9日に総裁へ昇格。このため、今回は総裁と副総裁の任期満了の時期が異なるわけだ。白川氏自身、副総裁を5年務めるつもりが、3週間足らずで総裁になったのだから、総裁就任会見で「正直なところ、事態の急激な変化に戸惑っている」と言うのも無理はなかった。

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